楽天の誤算だった“乱高下” 2試合で33失点の衝撃も…勝ち継投で驚愕の「100%」
楽天の前半戦をデータで検証する
楽天はここ数年は3位と4位を行ったり来たりの成績を残し続けている。今季は今江敏晃新監督にその状況からの脱却が期待されたが、前半戦終わったところで4位だった。前半戦を得点と失点の「移動平均」(大きく変動する時系列データの大まかな傾向を読み取るための統計指標)から検証する。(数字、成績は7月21日現在)
4月は平均得点3点、平均失点4点と収支マイナスの状況が続き、調子の波をつかみ取れない状況だった。さらに5月には21日、22日のホークス戦で計33失点と大敗を喫したかと思えば、3日のロッテ戦、10日の西武戦で2桁得点を記録するなど、投打が乱高下する不安定な状況となった。
ところが交流戦に入ると、救援投手陣が防御率1.74と活躍。得点もパ・リーグ1位の67得点と打線も奮起し、交流戦優勝を果たす。7月に入っても投打の噛み合わせも良く、前半戦トータルで43勝41敗と2つの貯金を作って前半戦を終えた。
「1番・右翼」の小郷裕哉外野手と「3番・中堅」の辰己涼介外野手という2018年ドラフト組の貢献が光る。特に小郷は前半戦だけでマルチ安打29回、猛打賞6回を記録し、97安打はパ・リーグ前半戦の最多安打となっている。
先発投手陣では開幕投手を務めた早川隆久投手は、防御率2.21、WHIP1.08、K/BB 4.73、QS率80%、HQS率47%とエースとしての責務を十分に果たしているが、それに追随するローテーション投手がなかなか現れていないのが現状である。
救援投手陣については、昨年までクローザーを務めていた松井裕樹投手に代わり、則本昴大投手がその任に就いたが、奪三振率7.64、奪空振り率Whiff%26%、WHIP1.15はクローザーとしては少々物足りなさを感じる数値だ。
ただ、8回リード時の勝率100%という数字には勝負強さを感じる。また、則本につなぐまでの鈴木翔天、藤平尚真、酒居知史、渡辺翔太といった救援投手陣の貢献も見逃せない。後半戦に巻き返しを図るとすれば、先発投手陣の再構築といったところだろうか。
鳥越規央 プロフィール
統計学者/江戸川大学客員教授
「セイバーメトリクス」(※野球等において、選手データを統計学的見地から客観的に分析し、評価や戦略を立てる際に活用する分析方法)の日本での第一人者。野球の他にも、サッカー、ゴルフなどスポーツ統計学全般の研究を行なっている。また、テレビ番組の監修などエンターテインメント業界でも活躍。JAPAN MENSAの会員。近著に『統計学が見つけた野球の真理』(講談社ブルーバックス)『世の中は奇跡であふれている』(WAVE出版)がある。