各校アクシデント続々も「ウチは1人もいません」 岡山学芸館の“足がつらない方法”
最も暑い第3試合で聖カタリナに1-0で競り勝った
第106回全国高校野球選手権大会は連日猛暑に見舞われ、例年以上に、足がつって交代する選手が続出している。そんな中、大会第4日の10日、第3試合で初戦を突破した岡山学芸館の佐藤貴博監督は「ウチは今日の試合もですが、岡山大会の全6試合を含め、この夏は足がつった選手が1人もいません」と胸を張る。「ごく一般的に言われていることだけでは、この暑さには対応できません」と“選手に足をつらせない”秘訣の一端を明かした。
この日も比較的涼しい午前8時2分開始の第1試合から、足をつって悔しい思いをする主力選手がいた。宮崎商は中京大中京(愛知)を3-2とリードして7回の守備を迎えたが、遊撃手の中村奈一輝内野手(3年)はダイビングキャッチを試みた際、両足がつってしまった。治療を施した上で遊撃手として出場を続けたが、本来であれば“守護神”として試合終盤にマウンドへ上がるはずの中村が、足の状態の影響で登板できず。チームは逆転負けを喫した。暑さが勝敗に大きく影響した格好だ。
午前10時57分開始の第2試合でも、木更津総合(千葉)が1点リードして7回の守りを迎えたが、先発の千葉雄斗投手(3年)の足がつり、イニング途中に降板して逆転負けにつながった。さらに相手の神村学園(鹿児島)でも、プロ注目の4番・正林輝大外野手(3年)の両足がつり、9回の守備に就かずベンチへ下がった。正林は今春の選抜大会期間中、わずか3本しか出なかった本塁打のうち1本を打った長距離砲である。
今大会は暑さ対策として、開幕した7日から第3日の9日まで、「朝夕2部制」が試験的に導入され、1日3試合で最も気温の上昇する時間帯を避けて開催されてきた。しかし、10日からは1日4試合の“通常運転”。最も暑い午後2時8分開始の第3試合で、聖カタリナ(愛媛)に1-0で競り勝った岡山学芸館が「この夏、誰も足がつっていない」というのは、注目すべき現象かもしれない。
「足がつって交代というのはすごく悔いが残る、それだけはさせたくない」
佐藤監督は「足がつると当然パフォーマンスが落ちますし、何より選手にとっては『足がつって交代した』というのが一番かわいそうで、すごく悔いが残ると思います。それだけはさせたくありません」と語気を強める。
“足がつらない”ためには「普段の生活が一番大事。“暑いから休ませる”ということをやっていると、必ずつりますから、ウチは暑くても走らせています」と明かす。その前提として「食べ物が非常に大事です。夏場に体重が落ちないように、栄養士さんの指導を受けながら食事を管理。スポーツドリンクやサプリメントもとり、コーチが体重をチェックしています」とも語る。
5回1死満塁の好機に中犠飛で“虎の子”の1点をもぎ取った高安凰真内野手(2年)は、部員100人のうち約半数が暮らす寮で生活している。「夏場には塩分が大事と言われていて、寮では食事のたびに味噌汁が出ます。誰も足がつっていないので、効果は出ていると思います」と納得顔だ。田井和寿内野手(3年)は「体重維持のために、練習の合間にも補食をとっていて、お茶碗1杯のご飯やうどんが用意されています」と付け加えた。
この日は、午後4時52分開始の第4試合でも、日本航空(山梨)先発の高木秀人投手(2年)が、2回の投球中に鼻血を出す一幕があった。治療後に続投したものの、その裏の攻撃で代打を送られ降板した。豊泉啓介監督は試合後「暑さの他にも、球場の雰囲気とか、いろいろなものが重なってしまったのかなと思います。鼻血を出したこともありますが、投球自体の状態もよくなかったのでスイッチしました」と説明した。
今大会は予想以上の暑さに見舞われ、選手には技術以前に、根本的な体力や気温に対応する知恵が求められている感さえある。
(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)