手がつけられない日ハム助っ人 メジャー108発の本領発揮…衝撃の「21/22」
パの8月首位は日本ハム…15試合で5点以上と打撃好調だった
8月に最もチームに貢献した選手をデータで探り出し、セイバーメトリクスの指標でパ・リーグの「月間MVP」を選出してみる。選出基準は打者の場合、得点圏打率や猛打賞回数なども加味されるが、基本はNPB公式記録が用いられる。
ただ、打点や勝利数といった公式記録は、セイバーメトリクスでは個人の能力を如実に反映する指標と扱わない。そのため、セイバーメトリクス的にどれだけ個人の選手がチームに貢献したかを示す指標で選べば、公式に発表されるMVPとは異なる選手が選ばれることもある。まずは、8月のパ・リーグ月間成績を振り返る。
〇日本ハム:16勝9敗1分
得点率4.23、打率.251、OPS.714、本塁打29
失点率3.47、先発防御率3.56、QS率46.2%、救援防御率2.09
〇ソフトバンク:14勝11敗
得点率4.28、打率.251、OPS、.748、本塁打33
失点率3.78、先発防御率3.43、QS率44.0%、救援防御率3.36
〇オリックス:14勝12敗
得点率2.50、打率.233、OPS.633、本塁打18
失点率1.95、先発防御率2.13、QS率64.0%、救援防御率1.25
〇楽天:11勝12敗1分
得点率3.38、打率.238、OPS.638、本塁打16
失点率3.98、先発防御率3.94、QS率45.8%、救援防御率3.38
〇ロッテ:12勝15敗
得点率2.52、打率.229、OPS.614、本塁打9
失点率3.08、先発防御率2.98、QS率51.9%、救援防御率2.72
〇西武:9勝17敗
得点率2.69、打率.211、OPS.579、本塁打11
失点率3.59、先発防御率3.80、QS率46.2%、救援防御率2.61
8月の月間首位となったのが日本ハムである。26試合のうち15試合で5得点以上と打撃好調で、初回得点確率30.8%、先制率65.4%と優位に試合を進めた。初回失点率11.5%も優位に働いたといえよう。
日ハムのレイエスは月間打率.403、8本塁打、OPS1.208を記録した
そんなパ・リーグのセイバーメトリクスの指標による8月の月間MVP選出を試みる。打者評価として、平均的な打者が同じ打席数に立ったと仮定した場合よりも、どれだけその選手が得点を増やしたかを示すwRAAを用いる。
wRAAの上位ランキングは以下の通りとなった
〇フランミル・レイエス(日本ハム):wRAA12.98、84打席、OPS1.208、打率.403、本塁打8
〇山川穂高(ソフトバンク):wRAA12.38、108打席、OPS1.039、打率.293、本塁打11
〇清宮幸太郎(日本ハム):wRAA10.16、106打席、OPS1.006、打率.320、本塁打7
〇佐藤龍世(西武):wRAA8.41、66打席、OPS1.060、打率.386、本塁打2
〇近藤健介(ソフトバンク):wRAA6.22、107打席、OPS.855、打率.256、本塁打5
〇藤岡裕大(ロッテ):wRAA5.50、72打席、OPS.913、打率.333、本塁打1
〇森友哉(オリックス):wRAA5.27、97打席、OPS.859、打率.250、本塁打5
上記ランキングに掲載されていないチームのwRAA上位選手は以下の通りである。
〇阿部寿樹(楽天):wRAA4.05、87打席、OPS.828、打率.243、本塁打5
8月好調だった日本ハム打線を牽引したレイエスと清宮がwRAAトップ3に入った。その中でも顕著な活躍を示したのが、メジャー通算108本塁打を誇るレイエス。出場22試合のうち21試合で安打を記録。残り1試合も敬遠で出塁したため、出場試合すべてで出塁を記録した。
月間30安打は清宮と並んでリーグ1位。打率.405、出塁率.432、長打率.797もリーグ1位。8本塁打のうち7本はエスコンフィールドで放った。8月の快進撃を攻撃面で牽引したレイエスをセイバー指標で選ぶ8月の月間MVPに推薦する。
ロッテ種市は30回を投げて30奪三振、与四球は僅か2だった
投手評価には、平均的な投手に比べてどれだけ失点を防いだかを示す「RSAA」を用いる。RSAAの上位ランキングは以下の通りとなった
〇種市篤暉(ロッテ):RSAA6.49、登板4、イニング30、防御率1.50、WHIP0.83、奪三振率9.00、与四球率0.60、被本塁打1、QS率100%、HQS率100%
〇宮城大弥(オリックス):RSAA5.57、登板5、イニング38、防御率1.42、WHIP0.92、奪三振率5.21、与四球率1.66、被本塁打1、QS率100%、HQS率60%
〇佐々木朗希(ロッテ):RSAA4.81、登板5、イニング24回1/3、防御率2.96、WHIP1.27、奪三振率10.36、与四球率3.33、被本塁打0、QS率20%、HQS率20%
〇アンドレス・マチャド(オリックス):RSAA4.74、登板12、イニング12、防御率0.00、WHIP0.67、奪三振率12.00、与四球率0.75、被本塁打0
〇曽谷龍平(オリックス):RSAA4.58、登板4、イニング26、防御率1.04、WHIP1.08、奪三振率9.00、与四球率1.38、被本塁打1、QS率100%、HQS率50%
〇北山亘基(日本ハム):RSAA4.45、登板2、イニング13回2/3、防御率0.00、WHIP0.59、奪三振率9.88、与四球率1.98、被本塁打0、QS率50%、HQS率50%
〇早川隆久(楽天):RSAA3.52、登板4、イニング27、防御率1.00、WHIP0.93、奪三振率8.33、与四球率1.00、被本塁打1、QS率75%、HQS率50%
上記ランキングに掲載されていないチームのRSAA上位選手は以下の通りである。
〇リバン・モイネロ(ソフトバンク):RSAA2.68、登板4、イニング27、防御率2.00、WHIP1.00、奪三振率6.67、与四球率3.67、被本塁打1、QS率75%、HQS率50%
〇隅田知一郎(西武):RSAA2.53、登板4、イニング25、防御率1.80、WHIP1.00、奪三振率8.28、与四球率1.08、QS率100%、HQS率25%
8月のパ・リーグで最もチームに貢献したと評価された投手は25歳右腕の種市である。登板4試合でHQSを達成。完投勝利も1試合記録した。30奪三振はリーグ1位で、与四球はわずかに2。抜群のコントロールも披露した。打たせても50%はゴロ打球であり、相手打者をしっかり抑えていることがわかる。8月のロッテは打線が湿りがちだったが、その中でもチームに貢献した種市をセイバー指標で選ぶ8月の月間MVPに推薦する。
鳥越規央 プロフィール
統計学者/江戸川大学客員教授
「セイバーメトリクス」(※野球等において、選手データを統計学的見地から客観的に分析し、評価や戦略を立てる際に活用する分析方法)の日本での第一人者。野球の他にも、サッカー、ゴルフなどスポーツ統計学全般の研究を行なっている。また、テレビ番組の監修などエンターテインメント業界でも活躍。JAPAN MENSAの会員。近著に『統計学が見つけた野球の真理』(講談社ブルーバックス)『世の中は奇跡であふれている』(WAVE出版)がある。
鳥越規央 プロフィール
統計学者/江戸川大学客員教授
「セイバーメトリクス」(※野球等において、選手データを統計学的見地から客観的に分析し、評価や戦略を立てる際に活用する分析方法)の日本での第一人者。野球の他にも、サッカー、ゴルフなどスポーツ統計学全般の研究を行なっている。また、テレビ番組の監修などエンターテインメント業界でも活躍。JAPAN MENSAの会員。近著に『統計学が見つけた野球の真理』(講談社ブルーバックス)『世の中は奇跡であふれている』(WAVE出版)がある。