盗塁“有利”にルール改正も「歴史的な意義は明白」 大谷翔平の50-50…米記者が訴える価値

ドジャース・大谷翔平【写真:荒川祐史】
ドジャース・大谷翔平【写真:荒川祐史】

2023年のルール改定で盗塁数が増加…投手陣からは「盗塁がしやすくなった」

 ドジャースの大谷翔平投手は前人未到の「50本塁打&50盗塁(50-50)」を達成し、53-55まで数字を伸ばすなど、打者に専念し歴史的なシーズンを送っている。一部では牽制やピッチクロックのルール改正が盗塁の価値を下げたという意見も散見されるが、米記者はこれに真っ向から反論した。

 スプリングトレーニングから走塁強化に取り組んだ大谷は今季盗塁数が大幅増。これまでのキャリアハイだった2021年の26盗塁から2倍以上を記録しているだけでなく、59回企図し55回成功で成功率.932と高い数字を残している。19日(日本時間20日)の敵地・マーリンズ戦では3本塁打、2盗塁をマークし史上初の50-50を達成した。

 大谷の偉業に追い風となったのは2023年の大幅なルール改正だ。ピッチクロックが導入され、投手の牽制の数が制限。ベースの大きさも変更され、塁間が約11.4センチ短くなった。昨年はブレーブスのロナルド・アクーニャJr.外野手が73盗塁を達成。今季もレッズのエリー・デラクルーズ内野手が65盗塁をマークしている。

 投手やコーチからは実際に盗塁が簡単になったという声が寄せられる。ドジャースのダニエル・ハドソン投手も「(ルール変更は)盗塁を手助けする要素」、ガーディアンズのシェーン・ビーバー投手も「MLB全体としてより攻撃的、より盗塁しやすくなった」と話す。大谷と走塁強化に取り組むドジャースのクレイトン・マッカロー一塁コーチも「間違いなく(盗塁は)より容易になった。ベースが大きくなったことで、塁間の距離が少し短くなった。走者は、牽制から逃れやすくなったこともある」と認める。

大谷の偉業の価値は不変「全員が50盗塁をマークしている訳ではない」

 一方で盗塁の“価値”が下がったか――。その答えに「ノー」と話すのが、ドジャース地元紙「ロサンゼルス・タイムズ」のジャック・ハリス記者だ。同記者は「全員が50盗塁をマークしている訳ではない」と反論する。

「ショウヘイが大幅に盗塁の数を増やしたことは感心しますし、盗塁はしやすくなりましたが、歴史的な意義はいまだに明白です」

 実際に大谷の盗塁数はメジャー全体で見ても2位。さらに40盗塁以上をマークしている選手の中で、失敗数は最少の4と成功率も高い。盗塁が簡単になったと話すハドソンも「彼らのような選手たちは、(ルール変更があろうがなかろうが)どのみち盗塁をするよ」、ビーバーも「パワーとスピードを兼ね備えているから、自分を助けることができる」と大谷の走力に感心を示していた。

 ナ・リーグのMVP争いではライバルとされていたメッツのフランシスコ・リンドーア内野手が15日(同16日)を最後に腰痛で試合に出ていない。その間に大谷は50-50を達成し、WARでも1位に躍り出た。「50-50を達成して、彼に投票しないことは難しいでしょう」とハリス記者。ルール変更は偉業達成を後押ししたが、大谷がとてつもないことを成し遂げたという事実に変わりはない。

(川村虎大 / Kodai Kawamura)

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