単独首位→月間20敗…広島は「勝つ術がなくなった」 元コーチが分析した“落とし穴”

広島・新井貴浩監督【写真:イワモトアキト】
広島・新井貴浩監督【写真:イワモトアキト】

2013~15年の3年間1軍打撃コーチを務めた新井宏昌氏

 広島は今季、8月終了時点で勝率.600(61勝48敗5分)で単独首位を走っていたが、9月に月間5勝20敗(勝率.200)の大失速。結局4位が確定し、クライマックスシリーズ(CS)進出はならなかった。現役時代に通算2038安打をマークし、2013年から2015年までの3年間は広島1軍打撃コーチを務めた新井宏昌氏が分析し、来季のリーグ優勝へ近づくためのポイントを指摘する。

「失速の要因は第一に、投手陣が9月に入ってから、そろって調子を落としたことでしょうね。もともと得点力はあまり高くないチームですから、勝つ術がなくなりました」と新井氏。確かに、8月終了時点で6勝3敗、防御率1.31をマークしていた大瀬良大地投手が、9月は月間4試合0勝3敗、防御率5.31。10勝5敗だった森下暢仁投手も5試合0勝5敗で防御率6.92。11勝5敗だった床田寛樹投手も4試合0勝3敗で防御率5.14と歯止めが効かなかった。8月まで必死に踏ん張っていた投手陣に、猛暑が少し和らいできた頃、一気に疲労が噴出したのだろうか。

 9月の広島で象徴的だったのは、11日に本拠地マツダスタジアムで行われた巨人との首位攻防戦だ。2-0とリードして迎えた9回、それまで防御率0.88を誇っていた絶対的守護神・栗林良吏投手が、1死も取れないまま2安打4四死球6失点でKO。リリーフした2投手も打たれて、この回一挙9点を失い、逆転負けを喫した。

 新井氏は「あの日の栗林に何が起こっていたのかは分かりませんが、彼の力量からすれば、多少の調子の波はあるにせよ、とても考えられない投球でした」とした上で、「そもそも8月まで広島が首位を走っていたこと自体、戦力から見て、開幕前には予想できなかった快進撃です。必死に頑張ってきたものが、あの試合のショックで挫けてしまった印象があります」とショックの大きさを表現する。

期待外れに終わった新外国人、指導陣は全員右打者

 総じて決して高くなかった開幕前の下馬評を覆し、優勝を狙えるところまで白星を重ねた広島。来季もうひと伸びして栄冠をつかむには、どうしたらいいのだろう。「何よりも打線の強化でしょうね。外国人選手の補強も不可欠だと思います」。打線の中軸として期待され、今季チームに加わった新外国人ジェイク・シャイナー外野手は12試合出場、打率.133(30打数4安打)、1本塁打。マット・レイノルズ内野手に至っては2試合4打数ノーヒットで、全く戦力にならずじまいだった。

 また、新井氏は打線強化のために、“陰”のポイントを指摘する。「現在の広島打線の顔ぶれを見ると、左打者にいい選手が多く、彼らが打たないと勝てないと思います。しかし、1軍に左打者の特性、特長を分かっていて、的確に指導してあげられる人がいるのか、疑問です」。今季の1軍首脳陣では、朝山東洋打撃コーチ、小窪哲也打撃コーチ、さらに新井貴浩監督を含めても、全員が現役時代右打者だった。

 広島には今季主力を張った選手の他にも、田村俊介外野手、韮澤雄也内野手、林晃汰内野手ら、将来性を感じさせる左打者が頭角を現しつつある。こうした選手たちが、来季のカープ躍進の鍵を握っているのかもしれない。

(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)

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