ダルが大谷翔平を抑えた“理由” 「チーム方針とは違う投球」か…専門家が見た“魔球”の正体
1打席に3球投げたカーブでボテボテの投ゴロ、ベアハンド送球
【MLB】パドレス 10ー2 ドジャース(日本時間7日・ロサンゼルス)
パドレスは6日(日本時間7日)、敵地で行われたドジャースとの地区シリーズ第2戦に10-2で快勝し、1勝1敗のタイとした。先発のダルビッシュ有投手は、大谷翔平投手と3打席対戦して無安打に封じるなど7回3安打1失点の快投。38歳のベテランの投球には妙味があふれていた。
ドジャース打線を抑えるキーポイントは、シーズンで本塁打、打点の2冠に輝いた大谷への対策だった。現役時代にNPB通算2038安打を放ち、オリックスなどで名打撃コーチとしても鳴らした野球評論家・新井宏昌氏は「ダルビッシュが多彩な変化球で大谷の強い意気込みを、のらりくらりとかわしましたね」と評した。
初回の第1打席は、外角低めのスライダーを振らせて三振。3回1死走者なしでの第2打席は、まず初球の真ん中のスプリットでバットを折り、カウント2-1となった後、4球目も外角低めのスプリットを打たせて一ゴロに仕留めた。
特に味わい深かったのが、パドレスが4-1とリードして迎えた6回。先頭打者として大谷を迎えた場面だ。初球は、118キロのカーブが真ん中低めに外れてボール。カウント1-1からの3球目にも、内角低めに116キロのカーブのボール球を見せた。
そしてフルカウントからの6球目。ダルビッシュが投じたのは、またもや高めから真ん中付近へ落ちていく117キロのカーブ。大谷は打って出るも、ボテボテの投ゴロとなり、マウンドを駆け降りたダルビッシュがベアハンドで一塁へ送球して、見事に打ち取った。
新井氏は「高めからのカーブには、甘くなればホームランされる危険が伴います。大谷もおそらく、バットを振り上げてホームラン──というイメージで振ったと思います」と指摘。「しかし、ダルビッシュのブレーキの利いたカーブは、他の投手のカーブ以上に失速します。打者は途中でカーブとわかりますから、『よし、今だ』というタイミングで打つのですが、それでは早すぎる。イメージよりボールが来ないので、バットの動きが早くなって芯でとらえるのが難しいのです」と解説した。
チームメートとの間でつけた“緩急”「方針とは違う投球」
ダルビッシュ以外のパドレス投手陣は、第1戦から大谷に対し、高めの速い球を多投している。大谷が第1戦でパドレス先発のディラン・シーズ投手から3ランを奪ったのも、155キロを計測した真ん中高めのボール気味のストレートだった。
新井氏は「ダルビッシュは、大谷に対して高めのストレートは1球も投げませんでした。自分のフォームシームでは大谷を打ち取れないと判断して、チーム方針とは違う投球をしたのだと思います。結果的に、第1戦でパドレス投手陣から速い球を数多く見せられた大谷にしてみれば、緩急がついて打ちにくい面があったのではないでしょうか」と見る。
ダルビッシュ降板後、大谷は8回の第4打席では、左腕タナー・スコット投手と対戦したが、156キロの速球を3球続けられ、3球三振に終わった。「今度はダルビッシュの変化球を見た後だったので、速球が打ちにくかったと思います」と新井氏は言う。緩急をつけることは投球の極意の1つと言われるが、ダルビッシュは他の味方投手陣との間で“緩急”をつけていたということか……。
ダルビッシュは左翼のジュリクソン・プロファー外野手の、外野フェンスの向こうへグラブを差し入れての“ホームランキャッチ”、右翼のフェルナンド・タティスJr.外野手の痛烈なライナーに対するジャンピングキャッチなど、味方の好守にも助けられて試合をつくった。パドレスがポストシーズンを勝ち抜いていく原動力になるかもしれない。
(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)