新庄監督、躍進の裏にあったDM活用術 昇格目標示しやる気に…育成選手まで性格把握
LINEでもXでもないツール「こだわっていないけど…インスタだけ」
日本ハムは今季2位となり、2年連続最下位から大きく飛躍してレギュラーシーズンを終えた。就任3年目の新庄剛志監督は、「SNSのやり取りが大きなポイントになったかな」と明かす。インスタグラムのダイレクトメッセージ(DM)を駆使して選手とコミュニケーションを図ってきた指揮官。ときにハッパをかけ、やる気を出させる“活用術”があった。
X(旧ツイッター)ではない。LINEでもない。使うのはインスタグラムだ。「LINEってプライベートな感じしませんか? Xは孫(正義)さんしかフォローしていないし、ハハハ。こだわっていないけど、なんかやりたくない。インスタだけで」とコミュニケーションツールに選ぶ。
その内容は、技術的な話から人間的なアドバイスまで多岐にわたる。1軍の選手にはその日の反省点などを伝えたり、ファームに降格する選手には鎌ケ谷で取り組むべきことを送る。ファームの選手には具体的に1軍に上がるための数字を示すこともある。
「『あと7本打ったら(1軍に)戻すから、6本打った時点で俺に(メッセージを)ちょうだいって。マネジャーに言って段取り組むから』って。そうしたら2、3日で打ったり。2日で打つ選手もいたからね。清宮君には確か15本って言って、めちゃくちゃ早く打ちましたね。セーフティとかしている選手もいて、その気持ちは大事ですよ。投手だったらテンポを上げさせたり、タイミングを狂わせたり、それをしてくれたら(1軍に)上げるよ、みたいな話もしました」
「監督が僕も見てくれているっていうのは僕たちの時代はなかった」
モチベーションを上げさせるだけではない。そのやり取りの中で「性格がわかる」ともいう。1試合はアドバイス通りにできても、次からすぐに忘れてしまう選手もいる。「わかりました、ありがとうございました」と返信してくる選手に、質問してくる選手……。自らやり取りすることで、どんな選手なのかを把握することにもつながっている。
「育成の選手は直接会えないので、『もうちょっとこうした方が早く1軍に上がれるよ』とか『昨日の本塁打、気持ち良かった?』とか。やっぱり全員をスターにしたいので。それが層の厚さにもつながってくる。それに監督が僕も見てくれているんだっていうのは、僕たちの時代はなかったから。そんなメッセージが来たら張り切る、張り切る。当時、そうだったらね」
就任1年目から貫いてきたDMの活用は、当時は物珍しく驚く選手も多かった。それでも「わからせましたよ。僕がずっと送って」と、今ではチームの“当たり前”に。「3人ぐらい(SNSを)やっていない選手がいるんで、その選手とはやり取りできないですけど」と笑うが、チーム力向上のために欠かせないものとなった。
(町田利衣 / Rie Machida)