名門大退部→徳島と東京“600キロ往復生活” 卒論を書くDeNAドラ3、波乱の野球人生

DeNAから3巡目指名を受けた徳島・加藤響(左から3番目)【写真:喜岡桜】
DeNAから3巡目指名を受けた徳島・加藤響(左から3番目)【写真:喜岡桜】

DeNA3巡目指名の加藤響は、大学4年生と独立リーガーの2足の草鞋で夢を叶えた

 この日のために四国アイランドリーグPlusへ飛び込んだ。「プロ野球ドラフト会議 supported by リポビタンD」が24日に都内で開かれ、徳島インディゴソックスの加藤響内野手はDeNAにドラフト3巡目で指名された。「球界を代表するショートになりたい」。その覚悟は生半可なものではない。なぜなら、徳島で過ごしたこの1シーズン、東京にある大学に通いながら、独立リーガーとして結果を残したのだ。

 山あり谷ありの日々だった。「上位でたくさん同じ歳の内野手が呼ばれていて、評価で負けているのかと(中継を見ながら)悔しくなっていました。DeNAから呼ばれた瞬間に『はぁー』って気持ちになりました」と胸を撫で下ろした。神奈川県厚木市出身で、小学6年のときには全国大会に出場し、ベイスターズJr.に選出されたこともある。

 さらに高校時代は、東海大相模の右の強打者として通算35本塁打をマーク。チームメイトの山村宗嘉内野手(西武)、西川僚祐外野手(くふうハヤテ)、鵜沼魁斗外野手(東海大)とあわせると、合計本塁打数が「156」になることから、同校の強力打線を象徴する「156発カルテット」として話題になった。

 順風満帆のようだが、「道のりは険しかったです」と打ち明ける加藤。高校3年になった2020年には、新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、春も、夏も、甲子園が中止になることが発表された。その後、東洋大へ進学するも硬式野球部を退部。自ら道を模索し、2024年春に徳島へ入団した。休学することはなく、徳島県に住みながら約600キロ離れた大学を往復し、大学4年生として授業を受けながらプロを目指してきた。

甲子園中止も「全部プラス」 魅力はその強靭な心と、高校時代から定評ある走攻守

「なんとかオンライン授業を受けさせてもらえないかと、先生方と調整して、それを許可していただけたので、それなら(独立リーグ挑戦を)やらない選択はないかなと。ただ、大学を卒業しているか、していないかで、その後(の道)もすごい変わってくると思っていて。先生方も『卒業した方がいい』と言ってくださったんです。どうしても現地で出席しないといけない授業もあるので、そのときは関東まで行っています」

 大学では今、卒業論文を書いているところだという。野球においても今季、遊撃手として開幕戦スタメンを勝ち取ると、前期と後期あわせて64試合に出場。パンチ力あるスイングで6本塁打、41打点をあげて打率.311の成績を残した。さらに8盗塁を記録した足も魅力だ。遊撃手部門でベストナインも獲得。遠征のほとんどがバス移動で、連戦やダブルヘッダーも日常茶飯事な独立リーグで、肉体的に苦しい日々を送る一方、「仕送りであったり、毎日連絡してくれたり」してくれた両親の支えがエネルギーになった。

 また、甲子園中止のときの感情も力に変えた。もし開催できていたら、高卒プロ入りできていたかもしれないことについて「間違いなくチャンスはあったかなって思います」と胸中を打ち明けたあと、「でも僕はそれを言い訳にはしないですし、それがあるから今があると思う。全部プラスだったかなと思います」と白い歯を見せた。さまざまな試練にぶつかり逞しくなった加藤は、慣れ親しんだハマスタで活躍することを誓った。

(喜岡桜 / Sakura Kioka)

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