比嘉幹貴の“金言”が「生きています」 悩める左腕に「どう?」…曽谷龍平に必要だったもの

オリックス・曽谷龍平(左)と比嘉幹貴【写真:真柴健、北野正樹】
オリックス・曽谷龍平(左)と比嘉幹貴【写真:真柴健、北野正樹】

オリックス・曽谷龍平が比嘉幹貴にもらった“金言”

 改めてレジェンドの言葉の重さをかみしめる。オリックス・曽谷龍平投手が、今季で現役引退した比嘉幹貴投手の助言を胸に、守備力向上を目指す。「特にフィールディングのことは印象に残っていて、自分の中で生きています」。真剣な表情で感謝の気持ちを表した。

 プロ2年目の今季、シーズンを通して先発ローテーションを守った左腕。打線の援護がなく、勝ち星には恵まれなかったが、チームトップタイの7勝(11敗)を挙げた。そんな中で、守備面で悔やまれる場面もあった。

 6月25日のソフトバンク戦(京セラドーム)。0-1の6回無死一塁で、今宮健太内野手の一塁側への送りバントを一塁へ暴投。バックアップの右翼手も捕れず、一塁走者の周東佑京内野手に続き今宮も生還して、2点を献上してしまった。

 左投手がバント処理で体を右に回転させる場合、送球が高くなったり暴投になったりすることが多い。キャンプでは時間をかけて練習に取り組んでいるが、シーズン中に練習する時間はほとんどないのが実情で、実戦を通して慣れていくしかない。

 そんな時、比嘉から「キャッチボールの後に、ショートスローを取り入れてみたら、どう?」とアドバイスをもらった。短い距離でリズムよくいろんなフォームや体勢で投げ合い、遊んでいるように見えるキャッチボールだが、比嘉に尋ねると、しっかりとした練習の意図がある。

「ピッチャーの仕事は投球がほとんどですが、フィールディングも大切です。試合になると予想もしない打球が飛んできますから、エラーをすることもあります。練習をしていないものは、切羽詰まった時にできません。最後の1分でいいからいろんな投げ方をしてリストを使って投げたり、グラブトスをしたりして『引き出しの一つにすればいいよ』と言いました。いつ生きるか分からないけど、積み重ねが大事なんです」

 曽谷は今季の失策が2つ。比嘉の現役最後の試合となった9月16日のソフトバンク戦でも、送りバントの処理で一塁に悪送球してしまった。「あの日は、試合前にフィールディングのアドバイスをしていただいたんです」と頭をかいた。10月2日には右手有鈎骨の摘出手術を受け、グラブを持つ右手首の不安も取り除いた。飛躍の3年目に向け、比嘉の助言を胸に守備も磨いて恩返しする。

○北野正樹(きたの・まさき)大阪府生まれ。読売新聞大阪本社を経て、2020年12月からフリーランス。プロ野球・南海、阪急、巨人、阪神のほか、アマチュア野球やバレーボールなどを担当。1989年シーズンから発足したオリックスの担当記者1期生。関西運動記者クラブ会友。2023年12月からFull-Count編集部の「オリックス取材班」へ。

(北野正樹 / Masaki Kitano)

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