イチロー氏、現代野球に警鐘 データ、データ…募る危機感「感性が消えていく」
5年間で11校目の指導は母校・愛工大名電高
マリナーズの会長付特別補佐兼インストラクターを務めるイチロー氏が、18日に母校・愛工大名電高で野球部員45人を指導した。事前に訪問は知らされておらず、部員たちにはサプライズ訪問になった。イチロー氏は「気になったのはデータで見えていないことを大事にしているか」と語り、“データ野球”へ警鐘を鳴らした。
イチロー氏はこの日、フリー打撃では柵越えも披露し、ベースランニング、キャッチボールなどで汗を流した。同校では最新の設備が揃い、「(練習の前に)寮や施設などを見学させてもらいました。で、この成績はないでしょ。この施設を持っている学校、ないでしょ」と、秋季大会ベスト16だった母校に“愛の鞭”を見せる場面もあった。
その一方で、「気になったのはデータで見えていないことを大事にしているか。それ(データ)だけじゃないこともある。気持ちがどう動くか、感性とか。データでがんじがらめになって、感性が消えていくのが現代の野球。自分で考えて動く。この施設はそれと同じような考え方になっている。僕が伝えられることはそれ以外のことです」と、昨今の球界の“あり方”に疑問を呈した。
練習を通して、イチロー氏は部員に何度も疑問を投げかけ、考えさせる場面があった。「今日、聞いたことばっかだったでしょ。データにないことばっかりだったでしょ」。「感性を大事にして、みんな能力が高いから。あんまり縛られないように。だってさ、ゲームで強いチームのいいピッチャーは甘い球来ないよ、なかなか。それをヒットにしないといけない」と熱弁した。
続けて「ヒットにできる技術の方が優先されるべき。甘い球を強く振る、打ち返す、ゲームの中で使えないからね。何とかバットに当てて、三塁ランナーをかえす。そういうことが必要になってくるからね。データを活用することも大事だけど、そうじゃないところにも大切なことがある」と説いた。
イチロー氏は2019年3月の引退会見にて、「2001年に僕がアメリカに来たけど、2019年現在の野球は全く別の違う野球になりました。まぁ、頭を使わなくてもできてしまう野球になりつつあるような……」と語っていた。もっとも、その後も球界の“データ野球”は加速度的に進み続けている。
(Full-Count編集部)