物議醸した投手変更「フェアじゃないのでは」 曖昧な新ルールに困惑…侍Jが直面した“難敵”
台湾が直前に予告投手を変更…試合後に謝罪「良い投手を温存したい」
国際大会ならではと言っていいのだろうか――。野球日本代表「侍ジャパン」は23日、「ラグザス presents 第3回 WBSC プレミア12」スーパーラウンドのチャイニーズ・タイペイ戦に勝利し、ここまで全勝で24日の決勝を迎える。9-6と打ち勝ったが、ピッチクロック違反や相手陣営の不可解な予告投手の変更など、イレギュラーな事象に対応を迫られることになった。
試合前の出来事だった。第1試合で米国がベネズエラに勝利したことで、決勝進出が決まったチャイニーズ・タイペイが当初予告されていた左腕のリン・イーリンから投手の変更を申し出た。日本側は拒否したが、最終的に50万円の罰金を支払い、WBSC側の承認を経てチェン・ボーチンに変わった。
ソ・ゴウク監督は試合後、「良い投手を明日に向けて温存したい」と理由を明かし「日本側に大変申し訳ございません」と謝罪。井端弘和監督も「決めるのは大会側。さほど気にはせず」と大人の対応を見せた。しかし、会見では「フェアではないのではないか」と質問が飛ぶなど、物議を醸していた。
苦難はそれだけではなかった。先発した早川隆久投手(楽天)が4-0の3回2死でリン・リーに対して初球を投げる前にピッチクロック違反を取られた。その打席で四球を与えると、続くツォン・ソンエンに適時二塁打を許した。その後も審判の判定にも苦しみ、自己ワースト7四球でマウンドを降りた。
SRでピッチクロックの問題が勃発「一定性がない」
ピッチクロックはメジャーリーグでは2023年シーズンから導入されている。メジャーでは投手がボールを受け取ってから走者なしで15秒、走者ありで18秒以内に投球動作を開始しなければ、ボールが宣告される。一方で、今大会は走者なしのみ20秒と緩めの設定になっている。
侍ジャパン投手陣は宮崎キャンプからピッチクロック対策を行い、早川もチェコとの強化試合の際には「全く問題ない」と話していた。実際にグループリーグでの違反はゼロ。しかし、22日のベネズエラ戦でも6回が始まる前にピッチクロックを巡って両監督と球審が話し合うなど、2日続けて問題が起こっている。
投手変更には寛容だった井端監督もこれには困惑していた。「打者(の準備)を待っている状態でボールと言われたので。その辺は曖昧なんですけど」。吉見一起投手コーチも「東京ドームに来てから一定性がない。早川に関してはそこで集中できてなかったのかなと思うのでちょっと可哀想だった」と同情した。
そもそもピッチクロックは試合時間の短縮を目的としているが、今大会では走者ありの場面では制限がなく、MLBのような1投手につき最低3人以上投げなくてはいけないといったルールもない。結果的に22日のベネズエラ戦は3時間52分、23日のチャイニーズ・タイペイ戦は3時間18分といずれも3時間超え。試合時間短縮に寄与しているとは思えない。
MLBではピッチクロックの導入に先立ち、2022年からピッチコムを導入。2023年には各球団ピッチクロック対策に大きな時間をかけていたが、それでもシーズン序盤は違反が相次いだ。ピッチクロックが導入されていないNPBナインにとっては初めてのルールで困惑もあるだろう。ただ、井端監督は「ボール回しもなしにして、バッターにもすぐ打席に行けるように」と話すように、できる最大の準備をするしかない。
(川村虎大 / Kodai Kawamura)