守護神の自由契約の影響も…西武・平良と球団との見えぬ着地点 契約保留の背景
先発5試合で防御率1.42→右前腕の張りで離脱→リリーフで復帰
まるで2年前のリプレーを見ているようだ。西武・平良海馬投手は3日、球団事務所で契約更改交渉に臨んだが、来季も先発を希望する本人と、リリーフへの配置転換を求める球団側の間で折り合いがつかず、保留となった。
「サインはしてないです。先発か中継ぎかの件で、サインができない状況です」。交渉後に会見した平良は、あくまで淡々と言葉を紡いだ。既に、来季から1軍の指揮を執る西口文也新監督とも2度、球団フロントとはこれで2度会談したことになるが、話し合いは「平行線」だという。
ちょうど2年前の契約更改交渉でも、それまで専らリリーフを務めていた平良が先発転向を直訴し保留。最終的には当時の首脳陣と球団フロントが折れる格好で、先発転向が認められた。実際、昨年は23試合に先発して11勝7敗、防御率2.40と見事に結果を出した。
今年もシーズン序盤は5試合に先発して1勝2敗、防御率1.42をマークしていたが、右前腕の張りで5月9日に出場選手登録を抹消され“暗転”。1軍復帰まで3か月を要し、8月8日の再登録以降は「先発より中継ぎの方が早めに復帰できるので」、リリーバーに回ることを受け入れ17試合2勝0敗9ホールド、防御率2.12だった。
西武では今オフ、今季リーグ2位の28セーブを稼いだ守護神アルバート・アブレイユ投手が、2日に公示された2025年度の契約保留選手名簿から外れ自由契約となった。広池浩司球団副本部長は「引き続き交渉はしていきますが、同時に有力候補を探りながらやっていくことになります」と語り、来季誰がクローザーを務めるかは不透明となっている。そこに通算31セーブの平良がブルペンにいれば、頼もしいのは確かだろう。広池副本部長は「他の陣容によりますが、場合によっては(平良が)抑えということも十分考えています」とうなずく。
「先発の時の方が貢献度が高いというデータがある」
一方の先発陣は、今季奪三振王の今井達也投手をはじめ、10勝を挙げて新人王に輝いた武内夏暉投手、今季9勝で野球日本代表「侍ジャパン」にも選出された隅田知一郎投手、今季は0勝11敗も過去に開幕投手を3度務めるなど実績十分の高橋光成投手ら、平良抜きでも、ある程度のタレントは揃っている。
平良自身は「球団から頂いた資料の中にも、2022年の中継ぎの時の僕の貢献度と、23年の先発の時の貢献度を比べると、先発の方が貢献できていたという数値がある」と主張。わがままを言っているわけではなく、先発した方がチームのためになるという理論を展開している。「監督の(リリーフに回ってほしいという)思いは強いと思いますが、僕も僕で先発への思いがありますし、チームに貢献して優勝したいと思っています」と現時点で譲る気配はない。
「配置が決まらないと、金額も決まらない」と平良が嘆くように、この日の交渉では年俸や、以前から移籍志願しているメジャーリーグまで話が及ばなかったという。
とはいえ、平良は11月15日に25歳となった。25歳未満の選手がMLB球団と契約を結ぶ際にマイナー契約に限られ、契約金・年俸や所属球団に支払われる譲渡金が低く抑えられる“25歳ルール”の対象から外れた。ポスティングシステムでのメジャー移籍がいよいよ現実味を増してきたと言える。
平良は「妥協点は探っていかなくてはいけないと思っています」と強調したが、“先発かリリーフか”以外にも、球団と話し合うべき課題は山積している。
(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)