先発の軸がFA権行使で流出危機も… 元コーチが太鼓判押す右腕「穴を埋める活躍が期待」
8月末時点で単独首位も…9・10月の大失速でCS進出を逃した広島
広島は今年、8月31日時点で2位の巨人に0.5ゲームの僅差ながら単独首位に立ち、6年ぶりのリーグ優勝が現実味を帯びていた。ところが、9・10月は7勝22敗(勝率.241)の大失速。結局、68勝70敗5分の“借金2”で4位に終わり、クライマックスシリーズ(CS)進出を逃した。現役時代に通算2038安打をマークし、広島でも2013年から1軍打撃コーチを3年間務めた新井宏昌氏が、失速の原因と来季浮上の鍵を探る。
「広島が最終的にCSにも残れなかったのは、8月まで快進撃を支えていた投手陣に、9月に入ってから一気に疲れが出たこと。それも、投手陣をカバーできなかった打線の弱さに原因があったと思います。特に、外国人野手はいないも同然でしたから」。新井氏はそう指摘する。今季の広島のチーム打率.238、チーム本塁打52は、いずれもリーグワーストだった。
2人の新外国人野手が開幕スタメンに名を連ねていたが、ジェイク・シャイナー内野手は12試合出場で打率.133、1本塁打5打点。マット・レイノルズ内野手に至っては2試合4打数無安打で、戦力になれなかった。
球団は今オフ、主砲候補の新外国人を2人獲得している。エレフリス・モンテロ内野手は、今季ロッキーズで67試合に出場し打率.205、4本塁打28打点。メジャー通算21本塁打で、マイナーでは通算645試合で106本塁打を放っている。一方、前レンジャーズ傘下のサンドロ・ファビアン外野手も、今年メジャーデビューして3試合出場にとどまったが、3Aでは116試合で打率.270、17本塁打81打点。「2人とも26歳と比較的若く、ハマれば伸びしろもあります」と新井氏は見る。
「2人が来年、日本の野球にうまくなじみ、マイナーリーグで残してきたくらいの数字を挙げられれば、広島は少なくともAクラスに入れるでしょうし、優勝争いにも絡めると思います。全然ダメなら今年同様、CS進出へギリギリの戦いになるのでしょう」と予測する。
今季チーム最多の71試合で4番を務めた小園に期待される“適所”とは
今季外国人野手が期待外れに終わった中、チーム最多の71試合で4番を務めたのが、小園海斗内野手だった。全143試合に出場し打率.280、2本塁打61打点。11月の国際大会「第3回WBSCプレミア12」では、日本代表「侍ジャパン」の「2番・二塁」で活躍した。
新井氏は「小園はよく頑張りましたが、本塁打数が示すように、現時点で4番を打つタイプではありません。ポイントゲッターを期待するのは、負担の掛け過ぎだと思います。出塁やチャンスを広げる役割で持ち味を発揮してほしい」と語る。
来年、外国人選手が打線の軸として機能すれば、「小園を1番に回し、今年専ら1番だった秋山(翔吾外野手)に5、6番もしくは3番で、走者を返す役割を担ってもらうこともできるでしょう」と新井氏。「リード面で頭を使わなくてはならない」坂倉将吾捕手の打撃面の負担を軽減することもできて、相乗効果がありそうだ。
一方、強力投手陣では今オフ、今季7勝の九里亜蓮投手が海外FA権を行使し、来年の去就は不透明となっている。しかし昨年のドラフト1位で、故障で出遅れたものの、シーズン最終盤に1軍入りし本領を発揮した(2試合1勝0敗、防御率2.45)常廣羽也斗投手は、来年が楽しみだ。「仮に九里がいなくなる事態となっても、穴を埋める活躍が十分期待できると思います」と新井氏は太鼓判を押す。
来年カープが泣くも笑うも打線次第、もっと突き詰めていえば外国人野手次第と言えそうだ。
(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)