西武投手陣の自己主張を「リスペクトします」 契約更改の“新交渉役”が歓迎するワケ
来年1月1日付で球団本部長に就任する広池浩司氏
西武は13日、球団事務所で契約更改交渉を行い、3日の1回目の交渉で契約を保留していた平良海馬投手が5000万円ダウンの来季年俸2億円プラス出来高でサイン(金額は推定、以下同)。今季まさかの0勝11敗に終わた高橋光成投手は、5500万円ダウンの来季年俸2億1000万円で更改した。今オフから球団側の交渉役を務めている広池浩司球団副本部長(来年1月1日付で球団本部長)は、大きな“ヤマ”を越え胸をなでおろした。
平良は10日前の1回目の交渉では、来季先発起用を強く希望し、リリーフへの配置転換を求める球団側と折り合えなかった。ところが、この日は「来年は中継ぎをやります」と意外にあっさり“陥落”。「(リリーフを受け入れた)一番の要因は言えませんが、金額的にもインセンティブ(出来高)をかなり付けてもらいました。球団側の(リリーフを)やってほしいという気持ちも伝わりました」と、思わせぶりなセリフをまじえて説明した。
将来的な希望を抱いている、ポスティングシステムでのメジャー移籍については「プレーしたい思いはありますので、気持ちを伝えつつ、そこもまた今後の交渉なのかなと思います」と語るにとどめた。
広池氏は今オフ、今年限りで退団する渡辺久信GM兼監督代行から引き継ぐ形で、交渉役を務めている。「平良がブルペンに入ってくれれば、過去の成績を見ても12球団屈指のリリーバーになることはわかっています。そこを務めてもらえるのは、来季へ向けて明るい材料だと思います」と“難関”を突破し笑顔を浮かべた。平良がほのめかした「一番の理由」については、「選手が明かしていない条件面について、私たちが触れることはありません」と言及しなかった。
一方、平良の後に行われた高橋の交渉は、今季白星なしの11敗という大不振に終わった上、こちらもポスティングシステムでのメジャー移籍を希望してきた経緯があり、当初は難航も予想されていた。しかし、ふたを開けてみれば、高橋は大幅減俸を飲み、「今回の契約更改交渉では、球団の方に僕の言いたいことを言いました。結構踏み込んだ話ができたので、すごく有意義な時間でした。詳しい内容は控えさせていただきますが、本当にすっきりしました」と、こちらも少し思わせぶりに笑顔を浮かべた。
2年前には平良が先発転向、高橋がメジャー移籍、今井が背番号変更を直訴
西武の投手陣は個性的で自己主張の強いタイプが多く、契約更改交渉が意外な展開となることもある。渡辺GMが担当した2022年のオフには、それまでリリーフ専任だった平良が先発転向を直訴し、今年同様1回目の交渉で契約を保留。高橋は将来的なメジャー移籍の意志を初めて伝えた。さらに今井達也投手が背番号「11」を、同年限りで現役引退した武隈祥太氏が付けていた「48」へ変更することを申し出て、球団側を困惑させた。
ただ、この3人がいずれも翌2023年、“有言実行”で結果を出しところは見事。平良は11勝7敗で先発の適性を実証し、高橋は10勝8敗で3年連続2桁勝利を達成。今井は10勝5敗で、自身初の2桁に到達したのだった。
今オフ“交渉役デビュー”の広池氏は、さぞかし頭を痛めているだろうと思いきや、「プロですから、交渉の席で自分の言葉でちゃんと話をするということは、素晴らしいことだと思います。そこはリスペクトします」と“歓迎”する。
広池氏自身、現役時代には広島に12年間在籍し、中継ぎを中心に通算248試合に登板した左投手だった。「昔の契約更改交渉は、『いいから判を押せ』みたいな雰囲気で、私自身も経験しましたが、そういうのってどうなのかなと思っていました。1人の個人事業主として、選手がちゃんと交渉できるのは素晴らしいことだと思います」と真摯に向き合う構えだ。
今季球団ワースト記録の91敗を喫した西武の巻き返しには、12球団ワーストのチーム打率.212、350得点に終わった打線の強化を避けて通れない。今度は強力投手陣を援護する野手陣の補強に腕を振るう。
(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)