侍J撃破で初の栄誉…台湾が見据える“野望” メンバー大幅刷新で挑む新たな世界一

プレミア12を制し、初の世界一に輝いた台湾代表【画像提供:CPBL】
プレミア12を制し、初の世界一に輝いた台湾代表【画像提供:CPBL】

オールプロ&トップチームの試合で、台湾は日本との連敗を9で止めた

 11月に行われた「ラグザス presents 第3回WBSCプレミア12」で台湾代表は、主要国際大会で初めて世界一に輝いた。決勝では野球日本代表「侍ジャパン」を4-0で破った。五輪、WBC、プレミア12の主要3大会において、台湾代表が決勝に進出したのは、銀メダルを獲得した1992年のバルセロナ五輪以来、32年ぶりだった。ただ、この時代はプロ選手は参加していなかった。国際大会においてオールプロかつトップチーム同士の日本代表との対戦は、2003年から今大会の2試合を含め9連敗を喫していた。

 昨年10月、侍ジャパン・井端弘和新監督が誕生した。台湾メディアは井端監督を「2013年、台湾全土のファンの心を打ち砕いた人物」と紹介した。その試合とは2013年3月8日、東京ドームで行われたWBC2次ラウンドだ。1点リードの9回2死一塁で、鳥谷敬氏に二盗を決められ、井端氏にセンター前への同点タイムリーを許した。結局、延長10回の末、3-4で敗れた。

 2004年アテネ五輪など、競った試合はほかにもあったが日本戦の勝利は遠かった。ただ、今大会の台湾代表は侍ジャパン相手にも怯まず、「勝ち」に来ていた。決勝前日の11月23日、日本と台湾の決勝進出が決定したことを受け、台湾は“消化試合”となったスーパラウンドの先発を変更し、エースのリン・ユーミン投手(ダイヤモンドバックス傘下)を24日の決勝に「スライド」で起用した。

 林は4回無失点で、5回のビッグイニングを呼び込んだ。WBSC(世界野球ソフトボール連盟)に罰金を払ってでもエースを「温存」した起用法は非難も浴びたが、曽監督は23日の試合後、日本側を混乱させた事を詫びたうえで、「決勝で侍ジャパンと素晴らしい戦いを繰り広げたい。そうした思いから決断した」と説明した。CPBLの蔡其昌・コミッショナーは大会後、ダイヤモンドバックス側と林の球数上限引き上げの交渉をしたものの、最終的に75球と通達されたこと、連投も禁じられていたことを明らかにした。

国内リーグも活況の台湾プロ野球…来春のWBCではメンバー一新の見込み

 決勝後、台湾メディアは主将の陳傑憲外野手(統一セブンイレブン・ライオンズ)に向け、昨年のWBCの決勝前に「憧れるのをやめましょう」と呼びかけた大谷翔平投手(ドジャース)のように、何かナインに呼びかけたのかと尋ねた。陳はこれを否定したが、「今後、台湾の選手はより自信をもって、国際大会で世界の強豪国と戦っていけると思う」と意義の大きさを語った。

 代表28人中26人が台湾プロ野球所属の選手で、優勝したことにも価値がある。過去、台湾プロ野球は、幾度も八百長など不祥事があり、観客が激減。複数の球団が解散や身売りに追い込まれ、リーグ存続の危機に直面したこともある。しかし、2013年のWBCをきっかけに野球人気が復活。1試合平均の観客動員数は2433人から6079人と、1992年以来2度目の6000人台を達成した。以降、各球団の経営努力に加え、電子音楽導入やチアリーダー増員など、応援を中心としたエンターテインメント路線も功を奏し、50000人台をキープした。

 昨年は2013年以来、史上3度目の6000人台へ。今季は台鋼ホークスが参入した効果もあり、年間観客動員数は276万6386人になった。1試合平均は7684人で。いずれも35年目で史上最多を記録した。台湾プロ野球にとって最高のシーズンを、プレミア12優勝で締めることとなった。

 しかし、来季の開幕前にはWBC予選が待っている。2023年WBCで台湾代表は1次ラウンドA組で最下位となり、予選に回ることとなった。代表選手の顔ぶれは一新されそうだ。12月11日にCPBLから発表されたリリースによると、ラージリスト35人のうち「海外組」が12、13人を占め、プレミア12の代表選手は陳のみとなった。

 台北ドームで開催される予選A組に入った台湾は、来年2月21日から25日、ニカラグア、スペイン、南アフリカと2枠をかけ戦う。予選を突破し、2026年の本戦では再び日本と熱い戦いを繰り広げてもらいたい。

(「パ・リーグ インサイト」駒田英)

(記事提供:パ・リーグ インサイト

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