「ヨイショするのは優しさではない」 波留敏夫2軍監督が伝え続ける“本当の愛情”
オリックス・波留敏夫2軍監督が発する「誰も助けてくれへんぞ」の意味
チームの底上げを、ファームからも“援護”する。オリックス・波留敏夫2軍監督が人間教育をチーム方針に掲げ1軍のV奪還を下支えする。「このチームにはまだぬるいところがあるんで、しっかりと挨拶するとか、使った道具をしっかりと片づけるなど、人として当たり前のことを教育していきたいと思います。それが必ず野球につながっていきますから」。指導方針への質問に、波留2軍監督は開口一番、技術以前の野球に取り組む姿勢を挙げた。
波留2軍監督は京都府生まれ。大谷高、熊谷組から1993年ドラフト2位で横浜(現DeNA)に入団。1998年に「マシンガン打線」の2番打者として38年ぶりの日本一に貢献した俊足巧打の内野手だった。気持ちを前面に出した積極的なプレーで知られ中日、ロッテでも活躍。現役引退後は横浜、DeNA、中日で1軍打撃コーチなどを務め、2023年からオリックスの育成チーフコーチに。2025年からは2軍監督に就任した。
中日の1軍打撃コーチ時代、試合途中の円陣で相手投手を攻略できないでいる野手陣に、関西弁で奮起を促す場面がSNS上で紹介され、ファンの間で厳しい指導者という見方が定着してしまった。
確かに、選手への声掛けはきつく聞こえる。ウォーミングアップ中の選手への「オイオイ、疲れとるんか」「誰も助けてくれへんぞ」という言葉は刺さるが、普段の動きを知ったうえで故障など体調の異変を見逃さない指摘なのだ。愛情のこもった声掛けに、選手には「よく見てくれている」と感謝の気持ちが芽生え、一瞬たりとも手を抜くことはできないと気を引き締める。
「誰も(厳しいことは)言いたくないですよ。でも、ちゃんと選手に対して言うことが優しさであって、ヨイショ、ヨイショするのは優しさではないと思うんです」。指導者として、選手にとって何が重要なのかを考えたからこその言葉だ。
技術を高めて競争に勝った者だけが生き残れる、プロの世界。それでも「野球じゃないことの方が人として大事だと思うんで、そこをちゃんと教育していきたいと思います」。愚直に選手と向き合う日々が続く。
○北野正樹(きたの・まさき)大阪府生まれ。読売新聞大阪本社を経て、2020年12月からフリーランス。プロ野球・南海、阪急、巨人、阪神のほか、アマチュア野球やバレーボールなどを担当。1989年シーズンから発足したオリックスの担当記者1期生。関西運動記者クラブ会友。2023年12月からFull-Count編集部の「オリックス取材班」へ。
(北野正樹 / Masaki Kitano)