社会で通用せぬ“元プロ”の肩書き「野球しかやってない」 落ち続けた書類選考…知った現実

元DeNA・齋藤俊介氏【写真:町田利衣】
元DeNA・齋藤俊介氏【写真:町田利衣】

齋藤俊介さんはDeNAで4年間プレー、サブマネを経てSB C&S株式会社へ

 2018年から4年間DeNAでプレーし、現役を引退後は3年間ファームサブマネジャーを務めていた齋藤俊介さんは、昨年12月からソフトバンクのグループ会社であるSB C&S株式会社の営業マンに転身した。「野球にずっと携わっていて、全然違う業界に行きたいと思った」とIT企業へ。新たな挑戦に試行錯誤しながら、刺激的な毎日を過ごしている。

 幼少期から野球一筋だった齋藤さんが下した、30歳での大きな決断だった。「野球をやりきったあとは社会人、ビジネスマンとして一流になりたいと思ってマネジャーをやりました。でももっとできると思った部分があり、全然違う業界でも活躍したらなと興味が沸いて、年齢もあるので思い切って出てみようと思いました」と野球界からの旅立ちを決めた。

 とはいえ、その道のりは簡単ではなかった。まずは転職エージェントに相談し、自己分析ややりたいことの明確化からスタート。成田高から立教大、JX-ENEOS(現ENEOS)と当然ながら野球一筋だったため、履歴書でアピールすることも職務経歴書に記すものも、全て野球だった。

 約50社に書類を送ったが、選考を通過したのは10社ほどで「本当に野球しかやっていなかったんだなと再認識しました。もちろん自分の中では毎日課題を持ってやっていたんですが、いざ言語化するとなると出てこないのがもどかしかったですね」と明かした。

目指す“道しるべ”「今後引退するプロ野球選手の参考にもなるのかな」

 その後の面接では猛特訓の成果も出て自分をアピールすることに成功。「今後伸びていくし、成長できるきっかけになる」とSB C&S株式会社に入社することが決まった。ICT事業本部クラウドサービス営業本部クラウドサービス営業統括部SaaSセールス部に配属され、現在は製品知識の勉強など実際の商談に向けた下積みに励んでいる。

 DeNAからソフトバンクのグループ会社への“電撃移籍”に「野球とは全く関係なく、そういうのは完全に度外視して決めました」と話す。しかし同僚だった上茶谷大河投手が現役ドラフトで、浜口遥大投手がトレードで、自身の直後にソフトバンクホークスへと移籍した。「ビックリしましたね。浜口に『一緒だね』って連絡したら『齋藤さんの給料につながるように頑張るよ』って。頼もしい限りです。これからセ・リーグはベイスターズ、パ・リーグはホークスの応援ですね」と笑った。

「かなりオールドルーキーなので、スピード感を持って会社の力になりたいというのがまず直近の目標です」と齋藤さん。入社後に上司に言われた「違う畑から入って成功したら格好いいじゃん」という言葉がモチベーションだ。日々できることも増え「まだ苦しいことも多いけど、ゼロスタートからできることが増える成長を感じて面白いです」と充実感を漂わせた。

 そしてもう一つのモチベーションが“道しるべ”となることだ。「(野球界とは)違うところでも頑張れば成功できるというのを示すことは自分の目標ですし、今後引退するプロ野球選手の方々の参考にもなるのかなと思って日々過ごしています。キャリアに悩む子も絶対にいると思うので、そういうサポートができたらうれしいなと思います」。ムードメーカーだった齋藤さんらしく、自分が決めた道を明るく照らしていく。

(町田利衣 / Rie Machida)

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