過酷で「眠れない」…日々悲鳴の弟子入り 消した“常識”、涙を流した「発想の転換」

オリックス・杉澤龍【写真:北野正樹】
オリックス・杉澤龍【写真:北野正樹】

オリックス・杉澤龍、過酷な自主トレに「起きたくないから、眠れない日も」

 あまりの過酷さに、星空を見上げる余裕はなかった。じっと天井を見つめて思うことは「このまま寝たら、もう明日が来てしまう……。起きたくないから、眠れない日もありました」。オリックス・杉澤龍外野手は、1月に“志願”で参戦したソフトバンク・栗原陵矢内野手との自主トレで極限状態まで自身を追い込んだ。

 涙を流しながら叫んだウエートトレーニングが、もう懐かしい。「ものすごく厳しい練習でした。いつも体がパンパンになるまで鍛えて……。でも、自分でお願いしたんでやり切るしか選択肢はなかったです。体ができているクリさんでも、こんなにウエートトレーニングをするんだなと感じました」。ともに過ごした20日間で得たものは、数えきれない。

 1月上旬の合流初日。「クリさんがどういう練習をするのかわからなかったので、ビクビクしていました」。初日が終わると「体がバキバキになりました……」と苦笑いで振り返る。起床、食事、練習場に到着してウエート。体を追い込んだ後はランニングメニューを乗り切り、午後からようやくバットを持つ生活を送った。

「部屋に帰っても動画を見て勉強していました。体の使い方や(バットの)ヘッドの動きですね。自分がどこまでできているか、全部を確かめていました。一流の選手は、ここまで自分のことを振り返るのか……と学んだ瞬間でしたね」

 日々の練習で感じたのは「自分の頭と体の動きをマッチさせる力」があること。「クリさんは1球1球を改善できる凄みがありました。体も、幹が強い。体の芯がどっしりしているからできるんです」。マメが固くなった分厚い両手に目線をやりながら、充実の20日間を回想する。

 杉澤は東北高、東北福祉大を経て2022年ドラフト4位でオリックスに入団。新人年の2023年は1軍で2試合に出場して、プロ初安打も放った。飛躍を誓った昨季は28試合に出場するも、打率.053と壁にぶつかった。2軍では打率.289をマーク。今オフは2年連続となるウインターリーグにも志願の参戦を決め、懸命にバットを振ってきた。

 栗原との出会いで“発想の転換”が起きた。「自分の形は正しいのかなと、ずっと疑問に思っていました。でも、打ててないんだから、正しくないよね……って感じで。クリさんと一緒に練習させてもらって、これまでの野球人生で僕の常識を全て消し飛ばしてくれました。一切、妥協せず、練習も生活も全てが丁寧な方でした」。クタクタになるまで練習する宮崎春季キャンプ。早寝早起きが習慣となった今はもう、夜空を見上げて活躍を誓えるようになった。

(真柴健 / Ken Mashiba)

RECOMMEND

KEYWORD

CATEGORY