西川龍馬のさりげない気遣い 隣のロッカーを“選択”…怪我の育成新人は「心配していません」

オリックス・西川龍馬、怪我スタートの育成新人に「胸郭を柔らかく」
オリックスの西川龍馬外野手が、怪我で出遅れた育成ドラフト4位の寺本聖一外野手(広島商、広島経大)に“広島愛”が溢れるメッセージを送った。「焦ってもしょうがない。(出遅れても)練習をする子だと聞いているので、心配していません」。西川が精悍な顔を引き締めた。
寺本は広島県出身。170センチの体を大きく使ったフルスイングが特徴の左打者だ。オリックスOBのレッドソックス・吉田正尚外野手に憧れる一方で、豪快なスイングから大学の先輩、ソフトバンク・柳田悠岐外野手になぞらえて“ギータ2世”と呼ばれてきた。
寺本の練習熱心さには定評がある。全体練習後も納得がいくまでバットの軌道などを確認する。入団後も、新人合同自主トレ初日にメニューを消化した後、午後からは自主練習を行い、1人で約2時間、マシン打撃などに取り組んだ。
「大卒で入団した育成選手には時間が限られている」という危機感もあり、連日の自主練習を続けた。しかし、1月中旬以降に「左第9肋骨の疲労骨折」と診断され、別メニューの調整を余儀なくされた。キャンプはウォーミングアップやベースランニングなどには参加しているものの、トレーナー指示のメニューを消化する悔しい日々が続く。
そんな時に届いた西川からのメッセージに、寺本は「うれしいですね」と顔をほころばせた。西川と寺本の縁は、広島で通っていた同じトレーニングジムから始まった。会話を交わしたことはなかったが、西川は「ドラフトで指名されそうな選手だと聞いていました」といい、オリックスに指名された後、ジムに電話を掛けて「あの子やね」と確認したという。
寺本は新入団選手発表会見翌日の施設見学で、自主トレ中の西川を見かけて早速、挨拶。「頑張れよ」と声を掛けてもらい笑顔が弾けた。サプライズもあった。1月8日から始まった新人合同自主トレで訪れた大阪・舞洲の球団施設のロッカーは、西川の隣だった。
「『隣、誰がいい?』と聞かれたので、寺本でいいですよと言っただけです」と西川は話すが、右も左もわからないプロの世界で育成の新人が心を落ち着けて野球に専念できるような環境を作ってやりたいという思いがあったはずだ。
「あまり振り回し過ぎないように言っといてください。怪我をしないように、胸郭を柔らかくしておくようにとも」。“広島愛”あふれる言葉で新人を温かく見守る。
○北野正樹(きたの・まさき)大阪府生まれ。読売新聞大阪本社を経て、2020年12月からフリーランス。プロ野球・南海、阪急、巨人、阪神のほか、アマチュア野球やバレーボールなどを担当。1989年シーズンから発足したオリックスの担当記者1期生。関西運動記者クラブ会友。2023年12月からFull-Count編集部の「オリックス取材班」へ。
(北野正樹 / Masaki Kitano)
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