宗山塁に漂う阪神レジェンド超えの資質 専門家が驚かされた“所作”「並の新人ではない」

楽天・宗山塁【写真:町田利衣】
楽天・宗山塁【写真:町田利衣】

宗山は「もう何年もプロでやっているかのように落ち着いている」

 どこがそんなに凄いのか。“20年に1人の逸材”ともいわれる楽天のドラフト1位ルーキー・宗山塁内野手(明大)が、練習試合などで実力の片鱗を見せ始めた。一方、昨年レギュラーを獲得したばかりの村林一輝内野手との正遊撃手争いは、これからが本番。現役時代にヤクルト、阪神など4球団で捕手として活躍した野球評論家・野口寿浩氏が分析する。

「宗山がレギュラーを取ってくれれば、チームとしてショートは10年は安泰でしょう。しかし、そこには名手・村林がいますから、争いにはなってきます」と野口氏。宗山の魅力を「走攻守のバランスが高いレベルで取れていること」と表現する。

 宗山は11日の日本ハムとの練習試合に「1番・遊撃」でスタメン出場し実戦デビューし、いきなり2打数2安打1四球の全打席出塁。15日の阪神との練習試合も「1番・遊撃」で2打数無安打も第3打席に四球を選んで出塁し、守備では遊ゴロ2つと遊飛1つを無難にさばいた。

 野口氏は「宗山の対外試合を見ていて感じるのは、もう何年もプロでやっているかのように落ち着いていることです。大卒とはいえ、これだけ注目されている中、あれだけ落ち着いてプレーできるというのは大したものです」と評し、「落ち着きという点では、あの鳥谷(敬氏)より上かもしれません」と語る。

 野口氏は阪神時代の2004年、早大から即戦力遊撃手として鳴り物入りで入団してきた鳥谷氏の、新人離れした落ち着きに驚かされたという。しかし、宗山の立ち居振る舞い、プレーぶりはそれをしのぐという。「守備もそうですし、打席で醸しだしている雰囲気もそう。打席で追い込まれてから際どいコースに投げられても、ファウルで逃げることができている。ああいうところが並のルーキーではないと感じます」。

「トリプルスリーを狙える選手になるかもしれない」

 宗山と鳥谷氏は、東京六大学出身の大物ルーキー、遊撃手、右投左打、そこはかとなく漂うスター性など共通点が多い。ちなみに、鳥谷氏の阪神入り当初も、遊撃には藤本敦士氏(現阪神総合コーチ)というレギュラーがいた。1年目のシーズン前半は一進一退だったが、夏に藤本氏がアテネ五輪へ派遣され、帰国後に不振に陥ったことから、鳥谷氏がレギュラーの座を固めることに。翌年から藤本氏が二塁へ回り、鳥谷氏は球界を代表する遊撃手に成長していった。最終的に歴代2位の1939試合連続出場をマークし、通算2099安打で名球会入りも果たし“レジェンド”となった。

 宗山のライバルとなる村林は、2015年ドラフト7位で大阪・大塚高から入団し、地道に実力をつけてきた選手だ。プロ9年目の昨年、遊撃のレギュラーに定着して初めて規定打席をクリアし、打率.241、6本塁打50打点5盗塁をマークした。「攻守に堅実で、右打ちなどのチームプレーもそつなくこなします。現時点で1軍公式戦に1試合も出場していない宗山に対し、結果を出している事実は重い」と野口氏は指摘する。一方で「スピードに関しては宗山の方が上でしょうね」と見ている。「村林は仮に遊撃のレギュラーを宗山に奪われたとしても、三塁や二塁で定位置をつかむ可能性が十分あると思います」とも付け加えた。

 宗山に、ウイークポイントはないのか。野口氏は「明大時代の遊撃守備の映像を見たことがありますが、遊ゴロを捕球して余裕のある状況の時に、余裕を持ち過ぎて、悪送球とまではいかないながら、球が引っかかったり、抜けたりすることがありました。油断ともいえます」と指摘しつつ、「プロでそういう気持ちを慎めば、しっかりしたスローイングができる選手。実際に練習試合でも、ゴロをパッと捕って足を使って送球すれば、素晴らしい送球が行ってました。一部にスローイングを懸念する声もありますが、僕は問題ないと思います」との見解を示した。

 とすれば、宗山はプロ1年目にどれだけの成績を残す可能性があるのだろうか。野口氏は「あの落ち着きを見ていると、出塁率でかなりいい数字を残す気がします。1年目から3割30盗塁を目指してほしい。盗塁に関しては、楽天には小郷(裕哉外野手=昨年32盗塁)、小深田(大翔内野手=同29盗塁)、辰己(涼介外野手=同20盗塁)ら意識の高い選手が多いので、間近で見ながら勉強してほしい」と期待。「1年目に30本塁打するのは難しそうですが、将来的にはトレーニング次第で打球の飛び方も変わってくるでしょう。将来的にトリプルスリー(3割・30本塁打・30盗塁)を狙える選手になるかもしれない」と将来像を描く。走攻守全てが“絵になる”スター候補の、公式戦デビューが待ち遠しい。

(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)

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