吉田輝星が“開発中”の新球は「いけるかも」 手応え十分の移籍2年目「逆算して」

オリックス・吉田輝星が生み出した“新しい変化球”の存在
科学の力で新球を編み出す。オリックスの吉田輝星投手が、今オフに鹿児島の鹿屋体大で行った自主トレで、データ解析に基づいた新しい変化球を“開発”し、怪我明けからプロ7年目のシーズンに臨む。「新しい変化球を発明したんです。もう、命名権まで僕が持っているんですよ」。球団データ班の高橋光信さんに向かって声を弾ませた。
甲子園を沸かせた秋田・金足農から2018年ドラフト1位で日本ハムに入団。2022年に中継ぎとして51試合に登板したが、先発に再転向した翌年は3試合登板にとどまり、トレードでオリックスに移籍した。昨季は50試合に登板し復活を果したが、9月28日の楽天戦(楽天生命パーク)で右肘に違和感を覚え緊急降板し、そのままシーズンを終えた。
右肘の疲労骨折と診断され、初めてリハビリ組で迎えたキャンプでは2月2日にブルペンに入った。およそ6割の出力で捕手を座らせ30球。持ち前の明るさを失わなかったのは、順調な回復具合と新しく挑戦する変化球に手応えを感じ取っているからだ。
新球のきっかけとなったのは、お世話になっている鹿屋体大SPORTECスポーツパフォーマンス研究センターでの自主トレだった。前年は動作解析を行いフォーム改造に役立てた吉田にとって“秘密基地”のような存在だ。今年も1月9日から22日まで訪問。リハビリ中のため、本格的な計測はできなかったが、遊び感覚で研究者との間で新球開発がスタートしたという。
「チェンジアップから派生したボールですね。キャッチボールをしているうちに、他の人が投げていない変化球を投げてみようか、という話になって。試しているうちに、データを数値化したら結構いけるかもという感じになったんです」
新たな球種が試合で使えるようになれば、ボールのネーミングも必要になってくる。阪急OBで通算165勝137敗、48セーブを記録した佐藤義則さんが、指の短さを逆手にとって編み出したフォークの変型といわれる「ヨシボール」が知られているが、名前は吉田が付けていいことになっているそうだ。
「キャンプ中盤以降には100%の出力で投げるイメージでいます。もちろん、開幕から逆算して調整しています」。新球で投球の幅を広げ、フル回転するつもりだ。
○北野正樹(きたの・まさき)大阪府生まれ。読売新聞大阪本社を経て、2020年12月からフリーランス。プロ野球・南海、阪急、巨人、阪神のほか、アマチュア野球やバレーボールなどを担当。1989年シーズンから発足したオリックスの担当記者1期生。関西運動記者クラブ会友。2023年12月からFull-Count編集部の「オリックス取材班」へ。
(北野正樹 / Masaki Kitano)
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