ドラ1大砲候補が秘める資質「なかなかできない」 コーチが指導を“禁じる”ワケ
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広島ドラ1・佐々木が醸し出す存在感「強く振ることを心がける」
背番号10が日に日に逞しさを増している。広島ドラフト1位の佐々木泰内野手が見せる豪快スイングに思わず見とれてしまう。「強く振ることを継続していけるように心がけています」と、1位指名の決め手にもなった持ち味を首脳陣にアピールしている。
青学大ではリーグ戦通算12本塁打をマーク。4年では主将を務め、大学“4冠”を成し遂げた。昨秋に左肩を負傷した影響で春季キャンプは2軍スタートとなったが、経過は順調な様子で「もう肩は問題ありません」と練習に不安なく取り組んでいる。
身長178センチと野球選手としては、大柄な部類には属さないが、打席ではオーラが漂う。左足を大きく上げる豪快なスイングから放たれる打球は力強く、8日に行われたフリー打撃では、首脳陣が見守る前で13発をスタンドに放り込んだ。「屋外で打撃練習をするのは久しぶりだったので“飛ばそう”という気持ちがありました」と振り返る。
練習を見守る新井良太2軍打撃コーチも「振る量をしっかりこなしているので、ここまで問題ないと思います」と目を細める。魅力であるスイングについては「シート打撃でも初球からフルスイングできています。簡単なようでなかなかできることではありません。目を引くものを持っています」と期待を寄せている。
新井コーチが心がける指導「やってはいけないのは“教える”こと」
通算297本塁打の楽天・浅村栄斗内野手を彷彿させる佐々木の打撃フォーム。新井コーチは「今のスイングで問題ないと思っています。また、色々考えて練習に取り組んでいるのが見てとれるだけに、何かを変えようとはせず見守っていくようにしています」と育成方針を語る。
練習の合間に、どんな感覚で打っているのかなど、アプローチを確認することはあっても、“教える”ことはしない。その裏には佐々木が秘めた資質を大切にしたい思いがある。「まだ実戦は始まっていないので、これまでやってきたことをプロでも見せてほしい。それが評価されて1位で指名されているわけですから。1番やってはいけないのは“教える”ことだと思っています」。
15日に行われた社会人・王子との練習試合では、広島のユニホームを着て初めて打席に立ち、スタンドのファンから大歓声を浴びた。二ゴロに終わり、「やっぱり緊張しました」と振り返ったが、22歳にかかる期待は大きい。これから増えていく実戦で、どんな結果を見せてくれるか期待は膨らむばかりだ。
「ドラフト1位の名前がついて回りますが、気負い過ぎずプレーすることを意識しています。プロでも自分の持ち味を発揮することに集中して、野球と向き合っていきたいと思います」と佐々木は言葉に力をこめた。かつては金本知憲氏が背負った歴史ある「10」が、再びグラウンドで輝く日をファンは楽しみにしているに違いない。
(真田一平 / Ippei Sanada)
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