元NPB戦士、MLBマイナーからも続々選出…再び”日本撃破”へ、WBC台湾代表のメンバー

WBC予選の台湾代表に選出された呉念庭【写真提供:(C)CPBL】
WBC予選の台湾代表に選出された呉念庭【写真提供:(C)CPBL】

プレミア12優勝メンバーはキャプテン陳傑憲のみ

 台湾プロ野球を運営するCPBLは2月15日、台湾北部・台北市の台北ドームで21日から25日にかけ開催される「第6回ワールドベースボール・クラシック(WBC)」の予選1組に出場するチャイニーズ・タイペイ代表28人を発表した。

 昨年11月のプレミア12で優勝したチャイニーズ・タイペイ代表が、WBCでは予選から戦うことに驚かれる方もいるだろう。前回のWBCでは多数のMLB経験者を擁するイタリア、オランダに連勝する健闘をみせた。しかし、キューバに完敗。全5チームが2勝2敗で並ぶ大激戦の結果、失点率で最下位となり、予選落ちとなってしまった。今回、予選1組に入った台湾は、ニカラグア、スペイン、南アフリカと来年の本戦出場枠2枠をめぐって戦う。

 CPBLでは2月3日から代表合宿がスタートし、初日に参加メンバー36人を発表した。メディアもシャットアウトのCPBLチームとの非公開練習試合4試合の他、12日、13日には韓国ロッテ・ジャイアンツとの交流試合2試合を台北ドームで行うなど、調整を行ってきた。

 CPBLの蔡其昌コミッショナーは昨年12月の時点で、優勝したプレミア12の代表メンバーについては、コンディションを考慮し休ませる方針を示しており、プレミア12に引き続き選ばれたのは、本人が強く出場を志願した陳傑憲(統一ライオンズ)のみ。再びキャプテンを担う陳傑憲が新たなメンバーを率い、WBC本大会の出場権獲得を目指すこととなった。

投手陣の若さが際立つ選出

 代表28人の内訳は投手15人、捕手3人、内野手6人、外野手4人。最少3試合、最多でも5日間で4試合ではあるものの、シーズン開幕まで時間があるうえ、WBCは厳格な球数制限、登板間隔が設けられていることから、投手が多めに選ばれ、野手は複数ポジション守れる選手が主体となった。平均年齢は25歳(投手は23.4歳、野手が26.8歳)で、プレミア12の27.14歳(投手27.3歳、野手27歳)に比べ、特に投手陣の若さが際立っている。

 なお、CPBL球団所属の選手は22人、MLB傘下及びNPB球団所属選手があわせて6人となっている。CPBL勢からは、コンディションの問題で、プレミア12に出場できなかった主力選手が多数選出された。

 レッドソックス時代の前回2023年WBCの第1ラウンドA組では、4試合で16打数7安打、2本塁打と大爆発し、大会ベストナインに選ばれた「台湾最強打者」張育成(富邦ガーディアンズ)、そして元西武の呉念庭(台鋼ホークス)は、いずれもロッテ・ジャイアンツとの交流戦で力強い打撃をみせ、順当に選出された。

 また、CPBLでは期待通りのパフォーマンスを発揮できていないが、元MLBで国際大会経験豊かな林子偉(楽天モンキーズ)の攻守での貢献にも期待したい。このほか、ロッテ・ジャイアンツとの練習試合では2試合共に一番を任せられた22歳の外野手、宋晟睿(中信兄弟)、第2戦で勝ち越し満塁本塁打を放った20歳の林佳緯(統一)、昨季の新人王、21歳の曽子祐(台鋼ホークス)ら新世代野手の活躍も楽しみだ。

 投手では、アメリカ・データサイト「FanGraphs」の国際プロスペクトランキング入りを果たしたCPBLを代表する2人の投手がいずれも選出。直球、変化球と共に高い質を誇り、その評価は古林睿煬(日本ハム)に勝るとも劣らない同ランキング21位の右腕、徐若熙(味全ドラゴンズ)は先発候補の1人だ。また、剛腕セットアッパー、同23位の曽峻岳(富邦)は仕上がりがよく、ブルペンの軸となるだろう。

 また、元阪神で、中信兄弟の平野恵一監督が優勝のキーパーソンと名指しした呂彦青は貴重な左腕、「強心臓」は頼もしい存在になってくれそうだ。海外組の投手では、NPBからは、日本ハムの孫易磊と、ヤクルトの翔聖こと徐翔聖が選ばれた。「MLBマイナー」組では、アスレチックスでスプリングトレーニングに招待されている荘陳仲敖(2A)のほか、陳柏毓(パイレーツ2A)、沙子宸(アスレチックス1A)、そして昨年6月、アスレチックスと台湾投手史上5位の135万ドルで契約した19歳の林維恩が選出された。

高まり続ける台湾の野球熱

 昨季、台湾プロ野球は、台北ドームの運用、第6の球団、台鋼の一軍参入もあり、観客動員数は過去最多をマーク。プレミア12優勝以降、野球熱はさらに高まっている。今回のWBC予選も2月21日から23日までの3日間の試合は、車いす席以外は全席売り切れとなっているほか、ロッテ・ジャイアンツとの練習試合は、平日の水曜、木曜であったにも関わらず、両日2万人を越える観客を集めた。

 合宿初日の訓話で、「プレミア12の成功はひとまず忘れよう」と訴えたCPBLの蔡コミッショナーのみならず、多くの台湾ファンの今大会に対する見方は「油断大敵」だ。昨年のプレミア12で、台湾自身がファンもびっくりの快進撃で優勝しただけに、そして、この予選は「負けられない戦い」だけにプレッシャーも大きい。できれば、2位と3位による最終日の決定戦にまわらず、3連勝、1位で、すっきりと本大会出場を決めたい。

 予選1組の勝ち上がりチームが、来年3月の本戦でどのグループに入るかは不明だが、台湾が突破となれば、東京ドームで行われるC組が最有力だろう。来年、東京での日本との「再戦」実現のため、日本からも台湾へエールを送っていただきたい。

(「パ・リーグ インサイト」駒田英)

(記事提供:パ・リーグ インサイト

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