振ってないのに「振り逃げ」 悪用を防ぐために条件設定…意外と知らないルール

ソフトバンク・中村晃【画像:パーソル パ・リーグTV】
ソフトバンク・中村晃【画像:パーソル パ・リーグTV】

3つ目のストライクを暴投や捕逸などで正規捕球できなかった場合

 プロ野球ファンでも、意外と正しく理解している人が少ないルールが存在する。その一例が「振り逃げ」だ。どのような場面で発生するのか、そもそも振り逃げとは? 実際の試合映像とともに、そのルールを解説する。

「振り逃げ」とは、捕手が3つ目のストライクの投球を暴投や捕逸などにより正規捕球できなかった場合に、打者が一塁へ走ることのできる権利のこと。打者が一塁に生きた場合、「三振と暴投」「三振と捕逸」「三振と失策」のいずれかが記録される。このうち「三振と失策」が記録されるのは、十分アウトにできるタイミングで捕手の一塁への送球がそれてしまったときや、一塁手が捕球できなかったケースが例として挙げられる。

 ただし、振り逃げの発生には条件があり、一塁に走者がいない場合、もしくは2死の場合に限る。一塁に走者がいる場合を除くのは、捕手がわざとボールをこぼし、進塁義務を発生させて故意にダブルプレーを取ることを防ぐため。同様の理由で、ダブルプレーが発生しない2死の場合は振り逃げが可能になる。つまり、ルールの悪用を防ぐために条件が設定されているのだ。

 ちなみに、第3ストライクが空振りである必要はなく、見逃し三振でバットを振っていなくても振り逃げは成立する。また、打者がダートサークル(本塁の周りを囲む主に土の部分)を離れると、走塁の権利を放棄したとみなされアウトが宣告される。

 ここからは、実際に振り逃げが発生した場面を紹介する。

 2023年4月16日の楽天対ソフトバンク戦。2-3とソフトバンクが1点を追う8回、無死走者なしの場面で先頭打者・牧原大成内野手が振り逃げで一塁へ向かった。捕手は一塁へ送球するも、一塁手が捕球できず。ボールを落としている間に、牧原大が一塁へ到達しセーフに。なお、次の中村晃外野手が2ランを放ち、振り逃げでの出塁が逆転に結び付いた。

「第3ストライクが空振りである必要はない」と説明した通り、2021年4月11日には見逃しでの振り逃げが発生した。無死走者なしのカウント0-2から、楽天・早川隆久投手のストレートをソフトバンク・今宮健太内野手が見逃し。しかし、このボールを捕手が取り損ねたため振り逃げに。早川が素早く一塁へ送球してアウトにしたが、非常に珍しいプレーとなった。

【実際の映像】“まさか”の出塁直後に劇的2ラン! 振り逃げが逆転につながった

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