新人なのに戦力外→手術で育成…悩まされた感覚のズレ「なんで」 2年間でつかんだ手応え

オリックス・椋木蓮【写真:小林靖】
オリックス・椋木蓮【写真:小林靖】

オリックス・椋木蓮、“ブランク”の1年半は「なんで抑えることができている」

 新しい自分に生まれ変わり、新しい変化球で強く生きる。右肘トミー・ジョン(TJ)手術からの復活を目指すオリックス・椋木蓮投手が、試行錯誤の末に編み出した“新球”で2桁勝利を目指している。「プロ1年目の自分とは、別の人間だと思っています」。柔和な顔を一瞬にして引き締めた。

 華々しいデビューを飾ったプロ1年目だった。椋木は高川学園高、東北福祉大から2021年ドラフト1位でオリックスに入団。プロ初登板となった2022年7月7日の西武戦(京セラドーム)で6回を2安打無失点でプロ初勝利を飾り、登板2戦目となった7月20日の日本ハム戦では、9回2死までノーヒットノーランの快投を見せるなど、明るい未来を予感させた。

 しかし、4戦目となった9月8日の西武戦(ベルーナドーム)で2回途中に右肘の違和感で緊急降板し、9月30日にトミー・ジョン手術を受けた。プロ生活1年目のオフに育成選手契約に切り替わってリハビリに専念。じっくりと治療やリハビリに専念し、2024年の開幕前に支配下選手登録されて1軍復帰を果たした。

 1年半のブランクによる影響は、予想以上のものだった。「最初は投げていても、自分でしっくりいかない球ばかり。(好成績でも)なんで抑えることができているんだろう」と首をかしげる日々が続いたという。

 原因は「感覚のズレ」だった。「1年目は投げる瞬間だけ、ぴゅっと投げるイメージだったのですが、手術をした後は感覚を戻すのに費やした2年間でした」と振り返る。感覚のズレは「1番、自信があった」というフォークが落ちないことにもつながってしまった。

「自分の球がいったとしても、ストレートだけ。カーブやスライダーでカウントを取れたかというとそうでもなかった。しっかりとカウントを取れ、空振りも取れるボールにしなければ」と悩んだ椋木が行きついたのは、新しい変化球となる「ライズカット」だった。それまで投げていたカットボールの握りを、ストレートに近いものに変えた。「今までの自分のカットは(変化や球速が)スライダーに近かったんですけど、握りを変えたら球速が7、8キロ上がりました」。

「まだ、自分は追いかける立場なので、追いついて追い越したい」

 新球は、初めての実戦となった13日の紅白戦で先頭打者・中川圭太内野手の初球に投げて、空振りを奪った。「手応えはありました。圭太さんはストレートを狙っていたそうですが『キレがあっていいボール』と言ってもらえたので、自信がつきました」。

 2イニングをパーフェクトに抑え、明るい表情だった。中継ぎで起用された昨季から、今季は先発に再び戻る。先発として長いイニングを投げ切るためにも、新たな変化球は大きな武器になる。

 今季の目標は「1年間先発で起用され、2桁勝利」。3年間の通算3勝(2敗)からは大きな飛躍だが「いきなりといっても、4年目なので。目指していかなければならない立場だと思います」。キャンプイン前に25歳の誕生日を迎えた。同世代に宮城大弥投手や曽谷龍平投手、東晃平投手のほか、先発に転向する古田島成龍投手らライバルが揃う。

「同級生や同世代と切磋琢磨して(その中で)1番になりたい。まだ、自分は追いかける立場なので、追いついて追い越したい」。自分を見つめ、おごることなく復活にかける。

(北野正樹 / Masaki Kitano)

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