宮城大弥の基金に“賛同” 山本由伸、ド軍開幕戦に少年たちを招待した舞台裏

宮城が設立した基金に山本が協力
ドジャースの大谷翔平投手や山本由伸投手の活躍で、日本中に多くの感動を与えた「MLB 東京シリーズ by Guggenheim」。凱旋登板で勝利を挙げた山本は、オリックス時代の後輩、宮城大弥投手が設立した「一般社団法人 宮城大弥基金」で野球を続けている子どもたちを招待し、大きな夢と勇気を与えた。
「子どもたちが、夢は叶うものだと実感してくれたのが、うれしかったですね。こんな機会を設けてくれた由伸さんには感謝しかありません」。子どもたちを沖縄から東京まで引率した、宮城の母、礼子さんが声を弾ませた。
山本が3月18日に東京ドームで行われた開幕戦に、宮城大弥基金の子どもたちを招待したことが分かったのは、宮城が19日に自身のインスタグラムに投稿したことがきっかけだ。
「この度、僕が2022年に立ち上げた『一般社団法人 宮城大弥基金』の活動の一環として、東京で行われたメジャー開幕戦に子どもたちを招待させていただきました」と報告し、「今回の取り組みは、観戦チケットは由伸さんから寄附して頂き、子どもたちの沖縄からの空の旅はANA様がサポートしてくださったことで、実現しました」と明かした。
宮城の父、享さんによると、3月7、8日ごろに山本から宮城に「開幕戦のチケットが10枚あるから、基金で野球をしている子どもたちを招待したい」と申し出があった。連絡を受けた享さんが保護者に連絡し、希望した6人の子どもと引率者4人で観戦することに。
試合当日は卒業式に出席する子どももおり、全日空機で羽田空港に降りて東京ドームに到着したのは試合開始15分前という慌ただしさだった。しかし、空港では待ち構えていた全日空の職員の案内でタクシーにすぐ乗ることができ、ドームでも山本の関係者が迎えてくれ、迷うことなく三塁側内野席で観戦することができた。関係者から手渡された袋にはユニホームやシャツ、タオルなどのグッズのほか、お土産を買えるようにと商品券も。もちろん、宿泊するホテルも用意してくれた。
スタートは3人…現在は小学生から高校生まで10人を支援
残念ながら山本との面会は叶わなかったが、世界最高峰の舞台で躍動する山本の姿を目に焼き付け、ヒーローインタビューを見届けた。
基金を設けた背景には、経済的な理由で野球を続けることに苦労した宮城の経験がある。同じような境遇の沖縄の子どもたちが野球を断念することがないよう、幼少期から高校生までを対象に支援する目的だ。宮城が父の享さんと立ち上げ、2022年12月から本格的に活動を始めた。
3人からスタートし、現在は女子1人を含む小学生から高校生まで10人を支援している。基金の原資は、宮城の奪三振数1個につき1万円や、アンバサダーを務めるスポーツメーカーミズノの契約金など。3月28日からは趣旨に賛同した沖縄県本部町の菓子店「誠もち店」が、スポーツ選手の栄養補給を目的とした「アスリートもち」を発売し、売り上げの一部を基金に寄付し、将来のアスリートを支援する。
宮城は「普段、沖縄で野球をしている子どもたちが東京を訪れること、そしてメジャーリーガーのプレーを間近で観て、応援する。彼らにとって心に残る特別な時間を過ごしてもらうことができたのではないかと思います! 素晴らしい機会をいただいた由伸さんとANAの皆様、ありがとうございました」と記した。子どもたちにとっては本当に「心に残る特別な時間」だったようだ。
礼子さんによると、子どもたちから「夢って遠いものだと思っていたけど、頑張ったら俺たちにも叶えることができるんだ」「夢をもっと追いかけてもいいんだと思った」となど、希望に満ちた言葉があふれたという。
岡山県備前市出身で、都城高(宮崎)から2016年ドラフト4位でオリックス入りした山本。チームのリーグ3連覇と日本一に貢献し、2024年からメジャーに挑戦した。身長178センチの“小兵”が、並居るメジャーの強打者と堂々と対峙する姿は、体格的にも恵まれていない子どもたちに大きな夢と勇気を与えてくれたとも、礼子さんは振り返る。
今季から山本がつけていた「18番」を背負ってプレーする宮城は、「僕は何もやっていません。基金の活動を知ってくれていた由伸さんとANAさんの招待があってのものなんで。子どもたちがどう思ったのかは聞いていませんが、プロ野球やメジャーリーガーを一つの夢として頑張ってくれたらうれしいですね」。新旧の「18番」による感動のリレー。これからも子どもたちに夢を与える存在であり続ける。
○北野正樹(きたの・まさき)大阪府生まれ。読売新聞大阪本社を経て、2020年12月からフリーランス。プロ野球・南海、阪急、巨人、阪神のほか、アマチュア野球やバレーボールなどを担当。1989年シーズンから発足したオリックスの担当記者1期生。関西運動記者クラブ会友。2023年12月からFull-Count編集部の「オリックス取材班」へ。
(北野正樹 / Masaki Kitano)
