捕手・若月の“原点” 10年前に岸田監督がかけた言葉…胸に秘める「大胆に指を出せよ」

抑え時代の岸田監督の言葉「いろんな怖さを知っても、今日のように大胆に指を出せよ」
一流投手が捕手を育てる――。オリックスの若月健矢捕手はプロ2年目の当時、抑えを務めていた現岸田護監督の助言を受け、成長を続けた。心に秘める“クローザー”からのアドバイス。胸に秘める言葉が、一流捕手の道の糧になっている。
「初めて1軍で岸田さんとバッテリーを組ませてもらった時、『これからいろんな怖さを知っても、今日のように大胆に指を出せよ』と、試合後に言っていただきました。そこは、今も一番大事にしています」。若月が11年前の出来事を、昨日のことのように話した。
花咲徳栄高から2013年ドラフト3位で入団。1年目はファームで57試合に出場、2年目は90試合に出場した。1軍には2年目に5試合に出場し、シーズン終盤の4試合でマスクを被った。現在の岸田監督から助言を受けたのは、この時だという。
「僕には怖いものがなかったんで、インコースもガンガン、サインを出したんです。岸田さんには、今後(サインを出す)怖さを覚えることがあっても、投手を窮屈にさせるのではなく投手の良さを生かすリードをしてくれよ、という思いがあったのでしょうね」と振り返る。
岸田監督には、若手の若月に捕手としての高い適性を見出し、大きく育ってほしいという思いがあったのだろう。1球で仕留める喜びと、1球で試合を左右してしまうリードの怖さは、経験を積んで学んでいくことだが、その助言は若月の成長を大きく手助けした。
若月は4年目の2017年から3年連続して開幕マスクを被り、10年目の2023年はゴールデン・グラブ賞を受賞。2024年は盗塁阻止率.474でトップに立った。「10年も前のことですから、岸田さんは覚えていないでしょうね。でも、今も投手のことを一番に考えてリードをしています」。
プロ15年目は監督と捕手という立場に変わったが、チームを勝利に導くリードに専念する。
○北野正樹(きたの・まさき)大阪府生まれ。読売新聞大阪本社を経て、2020年12月からフリーランス。プロ野球・南海、阪急、巨人、阪神のほか、アマチュア野球やバレーボールなどを担当。1989年シーズンから発足したオリックスの担当記者1期生。関西運動記者クラブ会友。2023年12月からFull-Count編集部の「オリックス取材班」へ。
(北野正樹 / Masaki Kitano)
