「絶望でした」健大高崎左腕を襲った“悲劇” ベンチで味わった現実「投げられない」

健大高崎・佐藤龍月【写真:加治屋友輝】
健大高崎・佐藤龍月【写真:加治屋友輝】

昨年の優勝投手・佐藤龍月、左肘手術明けで代打出場

 第97回選抜高校野球大会は28日、大会第10日の準決勝が行われ、第1試合は健大高崎(群馬)が横浜(神奈川)と対戦。初回に失点するなど一度もリードを奪えず1-5で敗れ、史上4校目の連覇を逃した。昨春の優勝投手で、昨夏に左肘手術を受けた佐藤龍月(りゅうが)外野手(3年)は7回に代打で遊飛。今大会4試合すべて代打で出場したが、無安打に終わった。

「もちろん投げたい気持ちはあったんですけど、現実は投げられないので……。自分ができることをやろうと、バッティングで何とか結果を出そうと思ったんですけど、うまくいかなくて悔しい思いが残ってます。(代打は)今までそういう役割を担ったことがなかったので、いい面で捉えたら、いい経験ができたかなと思います」

 昨春の選抜は2年生エースとしてフル回転。最速146キロの直球に加えて切れのあるスライダーなど豊富な変化球を武器に全5試合に登板、22回を投げて22奪三振無失点の快投で初優勝に大きく貢献した。だが優勝に導いた夏の群馬大会中に左肘痛を発症。靱帯損傷と疲労骨折が判明すると、甲子園に向かったチームから離脱し、8月に左肘側副靱帯再建術(トミー・ジョン手術)を受けた。

「大会中だったので、痛みはあったけど、先輩たちを甲子園に連れて行くのが(エースとして)自分の役割だと思って投げていました」。当時をそう振り返るが、手術が必要なほどの重傷だと分かった時は「全く先が見えない状況。絶望でした」という。そんな中、家族や仲間の励ましを受けリハビリを開始。12月に打撃練習を再開すると、「1」だった背番号を「18」に変えて甲子園に帰ってきた。

来月にはブルペン投球を再開…夏の大会には間に合う見通し

 3季連続で甲子園出場の健大高崎だが、2回戦で敗れた昨夏の甲子園大会前に離脱した佐藤龍にとっては1年ぶりの聖地。「今まで甲子園で負ける経験がなかったので、ベンチで初めて負けるのを経験して、本当に悔しいです」。無念の思いを口にする一方、投手復帰への見通しは立っているという。外野手登録の今大会、試合前などに外野でノックを受ける際は軽く返球するシーンもあった。「今は痛みもなく、キャッチボールは7割ぐらいの力で投げられています」。

 来月には捕手を立たせた状態でのブルペン投球を再開する予定。順調に進めば6月までに捕手を座らせての本格的な投球を行いたいという。「問題なく進めば、自分的には夏には間に合うと思っています」。将来の夢はメジャーリーガーで、高校からのプロ入りを目指しており「高いモチベーションでリハビリをやっています」と前を向く。青柳博文監督も「佐藤は夏にはいけるんじゃないかと思います」と期待を寄せた。

 今大会で選抜最速155キロを計測して注目を集めた石垣元気投手(3年)との二本柱が復活すれば、再びの日本一も見えてくる。「夏また(石垣と)一緒に頑張って、甲子園に戻ってきたい。夏は自分もマウンドに立って投げたいという気持ちが強いです」。悲劇に見舞われたエースは、困難を乗り越え、たくましさを増して大舞台に帰ってくることを誓った。

(尾辻剛 / Go Otsuji)

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