球速は「120キロでもいい」 鷹・大竹耕太郎が目指す“遅くても速い球”の正体
150キロを超える投手が揃う中で「差し込めるのであれば、何キロでもいい」
開幕ローテ入りを狙い、アピールを続けているソフトバンクの大竹耕太郎投手。160キロ超の最速を誇る千賀滉大投手を筆頭に、150キロ超のボールを持つ投手がゴロゴロいるホークス投手陣の中にあって、球速は140キロに届くか届かないか、という珍しい技巧派の左腕である。
25日に行われたロッテとの練習試合。大竹は3番手として5回から登板すると、3イニングを無失点に封じた。2本の安打を許したものの、危なげはなし。ストレートの最速は136キロだったものの、相手打者を押し込むシーンも見られた。
「昨日ピッチングした時に監督からリズムとタイミングという話をされて、テンポよくリズムよく投げていくことをそれだけ考えた。フォームのことをどうしよう、こうしようというよりはテンポを大事に投げました」。試合後にこう振り返った大竹はこの日の投球に一定の手応えを得た様子だった。
実は昨季途中、大竹は球速アップを目指して取り組む時期があった。だが、今の考えは真逆にある。「ストレートの速さは誰からも言われるところでした。ただ、そこを意識しすぎるが故に、変な力みになって、方向性を間違うとただタイミングの合わせやすい140キロになってしまう」と、球速よりも球質にこだわることにした。
「自分の持ち味を考えた上で、フォームとのギャップというか、そういうのがあって自分の持ち味だと思っている。それを崩さずに投げての速い球。気持ちよく投げれていて、結果速い球じゃないとうまくいかない」。速い球を投げようとして、力んで投げても“生きたボール”はいかない。体の力が抜けたしなやかな体の使い方ができた時こそ、大竹本来のボールがいくということだ。
球速に対する“欲”を捨てて、今季に挑む覚悟でいる。「抑えてる試合で球速を出そうと思っている試合って今までに1回もない。球速を出したからといって、抑えられるわけではないので。差し込めるのであれば、何キロでもいいです。120キロでも、バッターの『うわ、きてるな』というのは見ていて分かるんで、その感覚が欲しい。何キロというのは目指すところにはないです」。
120キロでも打者を押し込める“生きたボール”。球速では見えないボールの威力を追い求めていく。球速だけでは測れない投球の威力。速くなくとも勝てる投手、抑えられる投手。そんな投手として、大竹は開幕ローテ入りを目指して競っていく。
(福谷佑介 / Yusuke Fukutani)