新ポスティング制度は日本球団の一人負け?
すでに勝敗が分かれたとされる新ポスティング制度
日本国内で議論を読んでいる新ポスティング制度について、米ロサンゼルスタイムスで特集が組まれ、改めて全米で話題になっている。
すでに楽天の田中将大投手に対してメジャー球団による入札がスタート。日本球界の至宝の争奪戦を制する球団は4週間後にしかわからないが、この問題ですでに勝者と敗者がいると報じている。
【ポスティング制度変更による勝者】
1.MLBのロブ・マンフレッド最高執行責任者とコミッショナーのバド・セリグ氏
コミッショナーは球団オーナーのために仕事をしており、ファンのためにではない。市場の大きさから莫大な収益をあげることができるニューヨークから、最も市場の小さなミルウォーキーまで、どんな球団経営者をも満足させ続ける義務がある。そして、メジャーリーグ選手協会とのもめ事も避けなければいけない。今回のポスティング制度の変更でMLB上層部はこの双方に素晴らしい利益をもたらすことに成功した。
2.市場規模と資金力の低い球団
入札額に上限のなかった以前のポスティング制度では、レンジャーズは5170万ドルを日本球団に支払ってダルビッシュ有投手との交渉権を勝ち取り、更に選手との契約に5600万ドルを費やした。入札額はMLBの規定する贅沢税の適用外となるために、従来制度は資金力の乏しい球団の怒りを買っていた。今回の制度変更で上限2000万ドルの入札金で交渉可能となった。
3.資金力に優れた球団
従来制度では最高入札額の球団のみ交渉が可能で、ライバル球団のターゲット獲得を妨害するための“偽入札”も可能だった。一方、今回はドジャース、エンゼルス、レンジャーズ、ヤンキース、カブス、マリナーズなど資金潤沢の球団が2000万ドルの提示だけでそれぞれ交渉が可能になるということだけで、すでに勝利者と呼べるという。
4.選手
ポスティングにかけられる選手自身も複数の球団と交渉できることになった。それにより、条件面も高騰することになる。田中の場合は年俸総額1億ドルという声も出ているほどで、大きな勝利者といえる。
5.メジャーリーグ選手協会
MLBの選手協会は常々、選手の選択権のある、自由度の高いマーケットと高い契約条件を望んでおり、選手の条件を考えれば有利なシステムとなったと言える。
【制度変更による敗者】
セリグ氏にとって、さしたる関心のない日本の球団こそが最大の敗北者となったと指摘。田中の例を挙げれば、旧来制度では倍以上の入札金を手にできたはず。もしも楽天が田中をポスティングにかけることを拒否したなら、MLB側全員に幸福をもたらすはずだった今回のシステムの構築者であるマンフレッド氏のメンツを潰し、その後任探しをセリグ氏はせざるを得なかったのでは、と分析している。
【了】
フルカウント編集部●文 text by Full-Count