田中将大の存在が今オフのメジャーFA市場に与える影響とは
先発を探す球団は田中獲得が最優先事項
今オフのフリーエージェント(FA)市場は、比較的速いペースで動いている。だが、それは野手に限った話。投手の中でも、特に先発陣はなかなか移籍先が決まらない「我慢の冬」を強いられている。
まさに、ウサギとカメ。あっという間に片づいてしまった野手に対し、市場の動きが遅々として進まない先発投手だが、最大の原因は、つい最近まで楽天・田中将大の去就が決まらなかったことにある。
今オフのFA市場で、先発投手は人材薄だ。めぼしい名前と言えば、ガーザ(レンジャーズFA)、ヒメネス(インディアンスFA)、サンタナ(ロイヤルズFA)、アローヨ(レッズFA)といったところ。いずれも、先発ローテ1番手でもいけるが、できれば2番手くらいで使いたい、といった面々だ。だからこそ、まだメジャーで投げたこともない田中が、今オフ契約可能な先発投手の中で、最上位にランクされることになった。
田中がポスティングされるとなれば、獲得を目指す球団は、その資金を残して置かねばならない。新ポスティング制度が成立し、入札金の上限が2000万ドルに決められたが、それでも獲得には合計1億ドル以上を要するだろうと予想されている。それだけの大金。おいそれとはいかない。
前述の先発投手陣と契約する場合、最低でも年俸1500万ドルで3年以上の複数契約が見込まれるため、各球団は懐具合も考えながら、慎重に動かなければならない。先発市場が停滞する現状から言えることは、先発補強を目指す球団の大半が、田中獲得を最優先項目としている、ということ。田中争奪戦に敗れた球団が代替策として、ガーザやヒメネスの獲得に動くことになる。
田中が各球団と交渉できるのは30日間。1月24日午後5時(米国東部時間)が期限となる。これまでポスティング制度を利用してメジャー移籍した選手たちは、交渉期限ギリギリに結論が出ることが多かった。今回の場合、2000万ドルの入札金を払わなくてはならないが、それ以外はFA選手との交渉と一緒。意外に早く決着を見る可能性もあるが、早くても1月中旬まではかかるだろう。となれば、他の先発投手陣の契約は、それ以降になる可能性が高い。メジャーは日本と比べてキャンプインが2週間ほど遅いが、それでも早く移籍先を決めたいのが人の心というもの。FA先発投手陣は、しばらくモヤモヤとした日々を過ごさなければならなそうだ。
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佐藤直子●文 text by Naoko Sato