侍ジャパン、金メダルの鍵を握る「1番・山田」 元WBCスコアラーが分析する猛打の理由
米国打線は「下位打線も侮れない」と警鐘
東京五輪の野球日本代表「侍ジャパン」は金メダル獲得をかけて、7日の決勝・米国戦(午後7時開始=横浜スタジアム)に臨む。2009年WBCで日本代表のチーフスコアラーを務め、世界一に貢献した野球評論家・三井康浩氏は、「好調の1、2番の出塁が鍵」と指摘。山田哲人内野手(ヤクルト)と坂本勇人内野手(巨人)に注目する。
確かに、今大会は1番・山田&2番・坂本のコンビが躍動。山田は打率.313(16打数5安打)、1本塁打7打点をマークし、3盗塁も光る。坂本は.389(18打数7安打)の高打率だ。三井氏は「独特の緊張感がある決勝では、早めに先制点を取って優位に試合を進めたい。1、2番が出塁すれば俄然ムードが良くなる。2人とも盗塁できるから戦術も広がります」とうなずく。
特に山田は、7月31日のメキシコ戦で1点リードして迎えた4回に左翼席へ3ランを放ち、試合の流れを引き寄せた。4日の準決勝・韓国戦では、2-2の同点で迎えた8回2死満塁で決勝の3点二塁打。好調そのものだ。今季レギュラーシーズンでは、80試合に出場して打率.268と山田にしてはパッとせず、盗塁に至っては下半身のコンディション不良もあり、わずか3つにとどまっていた。豹変のきっかけはどこにあったのだろうか。
三井氏は「外国の投手はストライクゾーン内でどんどん勝負してくる傾向が強い。日本の投手のようにボール球を振らせようという意識は薄く、1-2のような投手有利なカウントでもストライクを投げ込んでくる。これが山田の打撃スタイルには合っていて、積極的に振っていけているのではないか」と分析する。足の状態もいいようだ。
一方で、米国打線について「下位打線を侮ると痛い目にあいかねない」と注意を喚起する。実際、米国は5日の準決勝・韓国戦で、2-1とリードした6回に6番のジェイミー・ウエストブルック外野手以下が1四球を挟んで3連打し、ビッグイニングにつなげた。「決して大柄ではない選手たちですが、2日の日本戦と比べて投球に対する反応が良くなり、しぶとさが出てきた。不用意にストライクを取りにいくと危ない」と指摘。上位で1発のあるタイラー・オースティン外野手(DeNA)、トリストン・カサス外野手(レッドソックス傘下2A)を警戒するのは当然だが、下位にも息は抜けないようだ。
「狭い横浜スタジアムですから、鈴木(誠也外野手=広島)、浅村(栄斗内野手=楽天)、柳田(悠岐外野手=ソフトバンク)にも十分1発を期待できる。打ち勝ってほしいと思う」と三井氏。金メダルへの最後の戦いは、どんな展開になるのだろうか。
(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)