誤審認めた異例の謝罪は“勇気ある決断” 期待したい高校野球の「正しい方向」への変化

バントの判定について、場内放送で説明する尾崎泰輔球審【写真:共同通信社】
バントの判定について、場内放送で説明する尾崎泰輔球審【写真:共同通信社】

窪田審判副委員長「ファンの方に申し訳なかったと気持ちを表したということ」

 20日に行われた第94回選抜高校野球の大会2日目、第1試合・広陵-敦賀気比では審判が誤審を認め、場内放送で謝罪する異例の事態が起こった。リプレー検証がない高校野球では今後につながる“勇気ある決断”だったと言えるのではないだろうか。

 4回無死一塁から広陵が試みた一塁線への犠打はファウルゾーンからフェアゾーンへ。ボールは一塁に転送されて打者走者はアウトとなり、一塁走者も挟殺されてダブルプレーになった。この時、打球に対して二塁塁審がファウルのジェスチャーをしており、広陵ベンチが抗議。これを受けて審判団が協議した結果、一塁走者のアウトが取り消され、1死二塁で試合が再開された。

 この試合で尾崎球審は誤審を認めて「大変申し訳ございません」と異例の謝罪を行った。場内アナウンスで、状況を事細かく伝え、誰もが納得する説明だった。試合後、窪田審判副委員長は「明らかに審判のミス」としながら「ファンの方に申し訳なかったと気持ちを表したということで私は良かったと思います」と、その判断を称えていた。

 この判定にSNS上でも「間違いを素直に認めた審判は素晴らしい」「こういうのが一般的になるといい」「一つの大きな扉が開かれた」と称賛の声が相次いだ。過去には、甲子園だけでなく各都道府県大会でも判定によって涙を飲んだ学校、選手たちが存在する。リプレー検証のない高校野球では、際どい判定は審判の裁量に任される部分も多い。

 窪田審判副委員長は何度も「正しい方向に」という言葉を口にしていた。仮に判定でミスをした後でも、その後にベストな判断を行っていく。今回のように、両チームやファンが納得できる試合展開を今後も期待したい。

(橋本健吾 / Kengo Hashimoto)

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