すし詰め状態のロッカー「選手の会話ほぼない」 トライアウトが放つ“異様な空気”
昨年参加した元中日サイド右腕が回顧「結果は全く意識しなかった」
プロ野球12球団合同トライアウトが、8日に楽天生命パークで行われる。参加するのは、今季限りで戦力外通告を受けた選手ら。再起への思いが交錯するグラウンドは、独特な重苦しい空気に包まれる。昨年に参加したひとりは「異様な感じでした」と振り返る。
「0か100。きょうで最後になるかもしれないという気持ちを噛み締めながら、マウンドに上がりました。野球人生の“本当の勝負”という感じでしたね」
昨季限りで現役を引退した元中日投手の三ツ間卓也氏は、独立リーグや社会人などの可能性は考えず「NPBか、引退か」でトライアウトに臨んだ。ロッカールームは参加選手ですし詰め状態。顔見知り同士で挨拶を交わす選手もいたが、皆遊びにきたわけではない。「ロッカーでの会話はほぼなかったです。選手同士が、よそよそしい感じでした」。終了したら即帰るのも、チームでの試合とは全く違った。
打者3人と対戦し、1奪三振、2四球。NPB球団から声はかからずに引退の道を選んだが「正直、抑えたかどうかの結果は全く意識していませんでした」と語る。投手なら三振、打者ならヒットや本塁打がアピールになったと映りがちだが「打者を抑えるのでなく、いかに自分アピールできるかだけを考えていました」。相手ではなく、自分との戦い。“品評会”ならではの思考だった。
戦力外になってから、トライアウト当日までは「なんでクビになったかを探す期間でした」と自己分析。他球団のスカウトも“弱点”は知っているはず。裏を返せば、克服した姿を見せれば未来が開ける可能性あると踏んだ。リリーフが主戦場のサイド右腕。「右打者のインコースに続けてツーシームを投げられるか」。そして「左打者のインコースにストライクゾーンで勝負できるか」。試みた結果は四球。「悪いポイントを修正する気持ちが、結果には現れませんでした」。潔く身を引き、第2の人生はイチゴ農家を目指して勉強を続けている。
また今年も、多くの選手たちがわずかな可能性にかけてグラウンドに立つ。1年前の経験者として言えることは「3者連続三振を奪っても、声はかからない。ストロングポイントを出して、NPBの切符を掴んでほしいです」。NPB戦士としての命をつなぐ一日から、目が離せない。
(Full-Count編集部)