超大型補強で「金満」揶揄も… 鷹の選手年俸総額が実は“例年通り”の不思議
昨季と比較すれば7億円前後アップも、一昨季と同水準に
ソフトバンクが今季に向けて空前の大補強を進めている。昨年末までに前日本ハムの近藤健介外野手や前ロッテのロベルト・オスナ投手、前DeNAの嶺井博希捕手らの獲得を発表。これで打ち止めかと思いきや、年が明けると、レンジャーズ3Aから自由契約となっていた有原航平投手の獲得も明らかになった。
FAで近藤を、昨季ロッテで守護神だったオスナを争奪戦の末に好条件で獲得するなど、独立採算で稼ぎ出す約300億円の売上による豊富な資金力を武器に市場を席巻した。今オフのソフトバンクの大補強に改めて「金満」と揶揄する声も飛び交っていた。
確かにこのオフ、ソフトバンクは多額の資金を投じて戦力を補強した。新加入する近藤、嶺井、オスナ、ガンケル、アストゥディーヨ、ホーキンス、そして有原も含めると、7選手の単年の年俸総額は23億円程度と見込まれる。これだけの資金を投入して補強すれば、選手の年俸総額も跳ね上がりそうなもの。現にMLBのような“ぜいたく税”導入という声もあがっている。
ただ、実際には球団としての年俸総額がべらぼうに跳ね上がっているわけではない。オフの契約更改を経て、日本人選手の今季の年俸総額は近藤や嶺井、有原を含めて49億円前後と推定される。外国人選手の推定年俸約18億円を加算すると、総年俸は約67億円前後となりそうだ。
2022年にNPB選手会が公開した日本人選手の年俸総額で、ソフトバンクは12球団でトップの約42億円。これに外国人選手の推定年俸を加えると、昨季の総額は60億円前後と推計される。今オフ、ベテランの松田宣浩内野手やメッツ移籍が決まった千賀滉大投手、アルフレド・デスパイネ外野手やジュリスベル・グラシアル外野手らがチームを去っても、昨年比で見れば、7億円ほど総額は上がる。
とはいえ、2022年は2021年から年俸総額が大きく下がった年だった。選手会の発表によれば、2021年の日本人の年俸総額は41億6000万円。この年はデスパイネ、グラシアルの年俸がピークだったことに加えて、デニス・サファテやウラディミール・バレンティンも在籍し、外国人選手の推定年俸は約24億円。総額では約66億円に上っていた。オフにサファテ、バレンティンが抜け、デスパイネとグラシアルの年俸も下がったことで、昨年は6億円程度、コストが圧縮されていた。
これを見ても分かるように、実は、2023年の年俸総額は2021年とさほど変わらない水準になっているのだ。2021年オフに圧縮されたコストの分を、投資に回したといえなくもない。湯水のように資金が湧いて出てきているわけではなく、例年、選手年俸にかかるコストは60億円から多くても70億円に届かないところで推移させる中でチーム編成を行っている。