深夜の記者会見で大谷翔平が見せた“素顔” 杉谷拳士への塩対応…WBCの「こぼれ話」
決勝戦当日……試合前に起きた出来事でブルペンの事態は急変
「第5回ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)」を制した侍ジャパンの激闘から1か月が経とうとしている。米フロリダ州マイアミでの取材から帰国後、WBCの“こぼれ話”をする機会が仕事でもプライベートでも多くあった。私自身がよく周囲に受けた質問をお答えする形で、取材秘話を紹介したい。
まずは「本当のところ、MVPって誰だと思う?」という質問から。投打に活躍した大谷翔平投手(エンゼルス)、チームを宮崎合宿から支えたダルビッシュ有投手(パドレス)、準決勝のメキシコ戦で3点ビハインドから起死回生の3ランを放った吉田正尚外野手(レッドソックス)……誰を挙げても異論はない。ただ、私があえて違う視点で挙げるならば、メキシコ戦で1点差に迫る犠牲フライを放った山川穂高内野手(西武)の一択だ。
昨季のパ・リーグ2冠王は代打の難しさに直面したが「きついっすよ。でもこれがジャパン(の心構え)だから」と本音を漏らしながら、現実を受け入れた姿は後世に伝えていきたいと思えたし、誰よりも先にグラウンドに出てきて、あるかどうかわからない出番に向けて準備をしていた姿も感動ものだった。あの屈託のない笑顔の裏には、人知れない苦悩があった。そんな状況で放った一打がなければ、9回を迎える前にあった「行ける!」というサヨナラ勝利の雰囲気はならなかったはずだ。
続いて、大谷投手のこと。「彼はどこまで完璧なの?」――。野球に関してはもう完璧だった。投打での活躍はファンの皆さんもご存知の通り。普段のエンゼルスを取材している各社の番記者たちもマイアミには勢揃いしていた。いつも以上に大谷投手は生き生きとした表情で、取材のミックスゾーンで話をしていたという。番記者から「大谷くんの1年を振り返った時、今日の取材が1番、楽しそうに話をしてくれた日になるんじゃないか?」という声もあった。それだけ大谷投手は大会の注目度を理解し、ファンを楽しませてくれた。
意外な一面が見れたのは優勝した後に行った宿舎での記者会見でのこと。深夜2時を回っていたとあり、眠そうに目をこすって、会見の椅子に座っていた様子が、私の撮影したカメラには残っている。本当にお疲れ様でした、と私は心の中で言った。