年齢を実感も…「見せてあげたい」 松井秀喜が野球教室で貫く“フルスイング”の理由

野球教室を行った松井秀喜氏【写真:荒川祐史】
野球教室を行った松井秀喜氏【写真:荒川祐史】

自身主宰のNPO法人「松井55ベースボールファウンデーション」開催

 巨人、ヤンキースなどで活躍した松井秀喜氏が29日、神奈川・川崎市のジャイアンツ球場で自身主宰のNPO法人「松井55ベースボールファウンデーション」の野球教室を開催した。35人の子どもたちと一緒にアップをして、キャッチボールをチェック。質問コーナーやフリー打撃では子どもたちにボールを投げてあげた。一番の“目玉”はバッティング披露。子どもたちの期待に応えるため、今回もしっかりと柵越えを放った。

 松井氏の打撃披露は、この野球教室では恒例となっている。いい打球が上がってもフェンス前で失速したり、強いライナーになったり……。強風に押し戻され、なかなかフェンスを越えなかった。迎えた19スイング目。ようやく右翼へアーチを描いた。

 現役を引退して10年。松井氏は現在は48歳となった。それでも待っている子どもたちがいるから、バットを握る手に力がこもる。

「年々、飛距離が落ちてきていますね。今日は風にも打球が負けて、年(とし)を実感しております。お子さんたちがたくさん来てくれた。私の現役時代のことは知らないと思いますが、元プロ野球選手のホームランであっても、目の前で見せてあげたいと思って。1本(柵越えを)を打つまでは続けたいなと思っていた。ただ、そろそろ怪しいですね……」と苦笑いを浮かべながらも、必死にフルスイングする意図を明かした。

 打撃投手を務めた時のこと。最初の1球目でタイミングが合わない子がいたら、その子に合わせて、投げるボールに強弱をつけていた。対応し始めたらスピードを上げる。合わなくなれば、ゆっくりと。いい当たりが出れば「おお!」「ナイスバッティング!」と大きなリアクションを届けた。子どもたちに笑みが広がった。

 最後に投げた1球が、もしも空振りしたり、バットにしっかりとボールが捉えられなかった場合は「もう1球打とう」と言って、予定より1球、多く投じていた。「来てくださっている子とはほんの一瞬しか(自分と)会うことができないから。『来てよかった』『いい1日だった』と終わってほしい。最後の一球があんまりいいスイング、打球でなかったら、いい打球を飛ばして終わってほしいんです」と子どもたちを思う。

 限られた時間の中で、子どもたちにできることを考えていた。野球が楽しいと思ってもらえること、この記憶が1日でも長く野球を続けることができるきっかけになることを願っている。松井氏が野球教室を日米で続けている理由がここにある。

(楢崎豊 / Yutaka Narasaki)

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