“元同僚”だらけの勝負を制したのは…? 昨季までの仲間がズラリ、粋なサプライズに涙
相手バッテリーが“元同僚”に「思い入れ」
■オリックス 10ー4 日本ハム(21日・京セラドーム)
心情や立場を知っているからこそ“駆け引き”が生まれる。オリックスの西野真弘内野手は21日に本拠地で行われた日本ハム戦に「6番・二塁」でスタメン出場し、3打数3安打1打点の活躍でチームの連敗を4で止めた。“猛打賞”の躍動の中、3回2死三塁で迎えた第2打席は、格別の思いだった。
「考えないようにしていたんですけど、頭にありましたね。捕手が寅威(伏見)で、投手が綱記(齋藤)だったので。バッテリーで……元チームメートじゃんって感じでした」
伏見とは同学年でオリックス時代に8年間、同じユニホームを着た。齋藤とは2014年ドラフトの同期入団で「初対戦で、ちょっと複雑でしたけど……打たないといけない場面だったので、結果が出てよかったです。思い入れもあり、楽しさもありながらの打席でした」と、3球目のスライダーを右翼線に飛ばし、適時二塁打を放ってみせた。西野のタイムリーで、京セラドームに大歓声が沸き、涙を浮かべるファンまでいた。
「いつから“まさたか”になったの……?」
試合後、家族から届いた1行のLINE。そこでハッとした。「応援がいつもと違ったんですね。チャンスの場面だったし、集中して(試合に)入りこんじゃっていた。ファンの方々がものすごい声量で応援してくださっていたのは、ずっと聞こえていました」。3回の第2打席だけ、レッドソックスに移籍した吉田正尚外野手のチャンス時に流れる応援歌が奏でられていた。
「『まさたか!』で盛り上がるところを『まさひろ!』に変更して応援してくれていたんですね。あのヒットは応援の力と、正尚が力をくれた一打です。みんなの執念が、僕に乗り移ってくれたんだと思います」
拍手喝采の中、二塁ベース上で一塁側ベンチに拳を突き上げると、本塁方向をチラッと見た。「寅威は配球がうまい。作戦をすごく考えてくる。だから無心に近い気持ちで。あまり寅威が捕手だと思わないように」。一息ついた瞬間、脳裏にはホールケーキが浮かんだ。昨オフの“送別会”で、果物たっぷりのケーキに「FAおめでとう、がんばれ!」と記したチョコプレート、さらに「TRY 23 日本一捕手」と刻んだガラスの記念品をサプライズで贈った。「寂しいですよ、だって、(オリックスの)選手で1990年生まれは、もう1人だもん」。勝負を決めるグラウンドに“元同僚たち”のドラマがあった。
(真柴健 / Ken Mashiba)