起死回生の逆転3ランも「あるかなと思った」 激戦区の王者慶応…監督にあった“予感”
慶応が9回に逆転3ランで、横浜を下し甲子園出場を決めた
第105回全国高校野球選手権の神奈川大会は26日、横浜スタジアムで決勝戦が行われ、慶応が横浜を6-5で破り、2018年以来、5年ぶり19回目の夏の甲子園出場を決めた。3番・渡辺千之亮外野手(3年)が土壇場の9回に逆転3ランを放つ、劇的な勝利となった。
慶応は3回、1番・丸田湊斗外野手(3年)の三塁打などで、2点を先制。6回に一時逆転、7回に追加点を許したものの、3-5で迎えた9回。「2点取って長い試合をやろう」という森林貴彦監督からのシンプルな言葉が、選手たちの底力を引き出した。1死二、三塁のチャンスを作ると、3番・渡辺千が3ランを放ち再逆転に成功した。
白熱したシーソーゲームに、超満員のスタンドは大歓声に包まれた。試合を決める3ランを放った渡辺千は「まさか打てるとは思っていなかった。あそこで打てたのは自信になる。大声援のおかげで自分の持っている以上の力が出せた」と振り返る。
実は、第1打席にチェンジアップで三振に倒れるも、その後第2打席から第4打席まで3四球を選んでいた。「3打席目と4打席目にフルカウントからチェンジアップを見極めることができたおかげだと思います」と渡辺千。1打席目に三振した球を、試合の中で即対応して見せたのだ。しかも横浜のエースの変化球を、だ。
そんな素晴らしい対処力に、森林監督も「だんだん対応してきたので、もしかしたら(本塁打も)あるかなと思っていました」と信頼を語り、称賛した。
春の選抜のリベンジへ「仙台育英ともう一度」
慶応がチームで掲げる目標「慶応日本一」に、また一歩近づいた。主将の大村昊澄内野手(3年)は「選抜や関東大会を経験しても全国で勝てなかった。だから神奈川県大会は絶対に勝ちたかった」と、ここまでの道のりを振り返った。悔しさがここまで自分たちを強くしてきたという。
大村の口からは「慶応日本一」という言葉がよく出てくる。「大村が1番言ってくれているので、僕もそれに引っ張られて(笑)」。そう監督が言うほど、主将の日本一への思いは強い。
今春の選抜では2回戦で昨夏王者の仙台育英に1-2で惜敗。その仙台育英も、今夏宮城県代表の座を勝ち取った。だからこそ「仙台育英ともう一度やりたい」(大村主将)とリベンジを果たすべく、もうすでに意識は甲子園に向いている。
主砲が勝負強さを発揮すれば、主将は声を枯らしながらチームを引っ張る。激戦区・神奈川で戦った全ての高校球児の思いを胸に、ナインは「慶応日本一」に挑む。
(木村竜也 / Tatsuya Kimura)