新人王は阪神勢優位「担当記者の票も大事」 専門家解説…秋広は「3割が絶対条件」
オリックスの高卒3年目・山下舜平大は開幕投手を務めここまで9勝をマーク
2023年のペナントレースも残りわずか。セ・リーグでは阪神、パ・リーグではオリックスに優勝マジックが点灯した。セ・パのAクラス争いも気になるところだが、シーズン終盤のタイトル争いも注目ポイントの一つ。その中でも今回は野球人生で1度しか手にすることができない新人王にスポットを当てる。ここまでの活躍ぶりを野球評論家の新井宏昌氏が分析した。
まずは、パ・リーグから。新井氏は「もはや、対抗馬が見つからない」と語り、オリックス・山下舜平大投手の名前を挙げる。高卒3年目の21歳はプロ初登板で開幕投手の大役を務め、ここまで16試合に登板し9勝3敗、防御率1.61の成績を残している。
26日のロッテ戦(京セラドーム)では腰の違和感で降板したが、自己最速160キロを記録するなど5回4安打無失点の快投。ここまで、登板間隔を空けながらも先発ローテとして貯金6を作っている。新井氏も「首位チームのなかで試合を作る安定感は素晴らしい。貢献度を考えてもエースの山本、宮城と遜色ない」と、断トツの新人王候補と見ている。
その他のルーキーではオリックスの育成出身・茶野篤政外野手が84試合に出場し打率.249。WBCにも出場した宇田川優希投手が33試合に登板し3勝0敗13ホールド、防御率2.23。楽天の内星龍投手は41試合の登板で防御率2.85と奮闘を見せるが「(3選手とも)好成績を残しているが、ややインパクトにかけるかもしれません」と口にする。
セは3年目の村上頌樹が1番手「防御率のタイトル、2桁なら新人王は当確」
では、セ・リーグはどうか。首位の原動力になっている阪神・村上頌樹投手を1番手に挙げる。プロ3年目の右腕はここまで18試合に登板し8勝5敗、116奪三振、リーグトップの防御率1.89をマーク。大きな怪我さえなければ2桁勝利はほぼ確実で「防御率のタイトル、10勝をマークすれば新人王は当確。ただ、パ・リーグに比べると対抗馬はいます」と見ている。
新井氏は、2人の野手に注目。巨人のプロ3年目・秋広優人内野手、そして阪神のドラフト1位ルーキー・森下翔太外野手だ。ともにチームの3番に定着し秋広は打率.286、10本塁打、森下は規定打席に達していないが終盤に調子を上げ打率.245、6本塁打をマークしている。
「もちろん現状は村上の成績、インパクトの方が断然大きい。同じ土俵に上がるために秋広は打率3割は絶対条件になってくる。10本塁打からどれだけ増やせるかも、ポイントの1つです。森下は打率.280~.290、2桁本塁打の数字を残せばといったところでしょうか」
新井氏は、1987年にともに15勝を挙げた近鉄・阿波野、日本ハム・西崎のパ・リーグ新人王争いを振り返る。結果的に阿波野が新人王に輝き、西崎には史上初となる「パ・リーグ会長特別賞」が贈られた。
「甲乙、付けがたい成績を残せば、新人王に近い賞は与えられる。同じ成績ならチームの順位、貢献度が重要。担当記者が票を入れるので、その部分も大事になります。そう考えれば、阪神勢が有利にもなりそうです」
オリックス・山下、阪神・村上を脅かす存在が現れるのか、各選手が最後に見せる追い上げにも注目が集まる。
(橋本健吾 / Kengo Hashimoto)