工夫がアダに…西武のサブマリンが悔やんだ“紙一重” 「逆に合ってしまった」
中堅・西川が懸命な背走も、打球がグラブの先をかすめて三塁打
■ソフトバンク 3ー2 西武(3日・ベルーナドーム)
野球は紙一重の連続だ。西武のサブマリン・與座海人投手の投球は、まさにそれ。3日に本拠地ベルーナドームでのソフトバンク戦に先発し、5回2失点に抑えたが、チームは2-3で惜敗し、自身も5敗目(2勝)を喫した。
與座にとってソフトバンクは、比較的に得意とする相手である。試合前の時点で今季1勝1敗、防御率1.80。8月2日の対戦(ベルーナドーム)では、試合時間わずか2時間8分で、9回104球2安打完封勝利を挙げていた。この日は初回、先頭の三森大貴内野手にいきなりファウルで粘られ、三直に仕留めるのに9球を要したが、「今日は球数を使ってでも打者を打ち取ろうと思っていました」とたじろぐことはなかった。
しかし、続く2番・周東佑京内野手の打席で、最初の“紙一重”が待っていた。左中間を襲った飛球を、中堅の西川愛也外野手が背走し、必死に伸ばしたグラブの先でかすめるも捕り切れず。勢い余って西川の左手からグラブが外れ、両方素手でボールを追いかけ、内野へ返球したが、俊足の周東はこの間に三塁を陥れていた(記録は三塁打)。結局、続く柳田悠岐外野手の二ゴロの間に先制点を許した。
「捕れましたよ……。グラブに当てたからには捕らないといけません。捕っていたら、試合の流れがこっちに来ていた。あの1点で負けたのだと思います」と西川。決して拙守とは言えないプレーだが、悔やんでも悔やみ切れなかった。マウンドの與座も「あそこまで飛ばされたピッチャーが悪い」と責任を感じていた。
対柳田は今季9打数無安打、昨季も対戦打率.143
外崎修汰内野手の11号ソロで同点に追いついてもらった直後の3回にも、もう1つの紙一重があった。1死走者なしで、甲斐拓也捕手に初球の129キロのストレートをとらえられ、勝ち越しの10号ソロとされたのだ。
甲斐は9番打者とはいえ、前日2日にエースの高橋光成投手が9号2ランを喫しており、警戒はしていた。だからこそ、「(足を上げた時に)少しタメをつくり、フォームに緩急をつけたのですが、逆にそれが相手のタイミングに合ってしまった。ボールも外角を狙った真っすぐが真ん中に抜けてしまいました。投げミスです」と悔やむ。
一方で4回2死満塁、5回1死一、三塁のピンチは無失点でしのぎ、粘り強さも見せた。特に強打者の柳田を、4回の第2打席では100キロジャストのカーブを振らせて三振。5回1死一、三塁での第3打席は、カウント3-2からの9球目に、高めの128キロのストレートで三邪飛に仕留めた。柳田との今季対戦成績は9打数無安打。昨季も対戦打率.143(14打数2安打5三振)の“ギータキラー”ぶりだ。與座自身「しっかり球数をかけて反応を見ながら、投げる球をチョイスできたと思います」と手応えを感じている。
球界で“絶滅危惧種”となりつつあるアンダースロー。スピードではオーバースローなどに劣るだけに、紙一重で相手打者のタイミングを外す操作が重要になる。與座は投球にさまざまな工夫をこらしながら、孤高の道を行く。
(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)