広島はなぜ躍進できた? 新井監督が埋めた“弱点”…劇的改善の「-20.0→8.5」

広島・新井貴浩監督【写真:矢口亨】
広島・新井貴浩監督【写真:矢口亨】

守備指標が大きく改善、守り勝つ野球で5年ぶりのAクラス

 新井貴浩監督1年目となった広島は今季、74勝65敗4分でペナントレースを終えた。開幕4連敗と厳しいスタートとなったが、チーム一丸で粘り強い戦いを続け、7月下旬には一時首位に立つなど、台風の目として存在感を示した。結果、リーグ3連覇を果たした2018年以来のクライマックスシリーズ(CS)進出を決め、新井監督は球団新人監督最多となる74勝をあげた。(数字は10月1日時点)

 5位に終わった昨年からチームの何が変わったのか。分析を行う株式会社DELTA(https://1point02.jp/)のデータを見ていくと、守備面で大きな変化がわかる。まず目につくのが「UZR(ultimate zone rating)」。セイバーメトリクスで守備全般の貢献を示す数値だが、今季はリーグ3位の8.5。昨年が-20.0だったのでその違いは歴然だ。

 守備に関連する数値をポジションごとに見ていくと、興味深いデータが浮かび上がる。外野手の送球による貢献を示す「ARM(arem ratings)」はリーグトップの12.4。新井監督が西川龍馬外野手、秋山翔吾外野手、野間峻祥外野手をレギュラーに固定することで外野守備の安定を図ったのが見てとれる。3人は「UZR」でもリーグ上位の数値を残している。

 もう一つ、大きな数値の変化を見せたポジションがある。昨年はレギュラーが固定されなかった捕手だ。今季、チーム全体の捕手の「UZR」はリーグ3位の-1.5。プラスに転じてはいないが、昨年の数値がリーグ最下位の-7.2だったことを考えると大きな改善。さらに盗塁阻止率も昨季は.206とリーグ最下位だったが、今季は.260まで上昇している。昨季は三塁を守った坂倉将吾捕手を開幕から捕手として起用したことが好影響を与えている。

 失策数はリーグワーストタイの82だが、その内容は昨年までと大きく異なっている。ほかにも盗塁数が26から78に増加し、チーム防御率も3.54から3.20に良化するなど、広島らしい「足を使った守り勝つ野球」を実践した1年だったと言える。

 一方で課題もある。総得点はリーグ5位の493得点。中日を除く4球団は全て500得点以上を記録しており得点力不足は否めない。また、苦手投手をつくってしまったのも課題。阪神の大竹耕太郎投手は広島戦の成績が6勝0敗、防御率0.57。DeNAの東克樹投手は4勝0敗、防御率1.84と“お得意様”にされている。両左腕とはCSで対戦する可能性が高いだけに対策が急務だ。

 12球団で1番早く143試合を戦い終えた広島だが、今年はまだ負けられない戦いが続く。シーズン同様、広島らしい粘り強い戦いでCSに挑む。

(Full-Count編集部 データ提供:DELTA)

データ提供:DELTA http://deltagraphs.co.jp/
 2011年設立。セイバーメトリクスを用いた分析を得意とするアナリストによる組織。書籍『プロ野球を統計学と客観分析で考える デルタ・ベースボール・リポート1~3』(水曜社刊)、電子書籍『セイバーメトリクス・マガジン1・2』(DELTA刊)、メールマガジン『1.02 Weekly Report』などを通じ野球界への提言を行っている。集計・算出した守備指標UZRや総合評価指標WARなどのスタッツ、アナリストによる分析記事を公開する『1.02 Essence of Baseball』(https://1point02.jp/)も運営する。

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