潜在能力は「秋山幸二さん」…西武19歳に漂う“大物の予感” コーチが見た確かな成長

フェニックス・リーグに参加する西武・古川雄大【写真:宮脇広久】
フェニックス・リーグに参加する西武・古川雄大【写真:宮脇広久】

熊代コーチが潜在能力を絶賛「バネがあって、足が速く、地肩が強い」

 宮崎で行われている非公式戦「みやざきフェニックス・リーグ」では、連日、若手がアピールを続けている。西武には将来的に山川を超えないとも限らない有望なスラッガーの卵も。爪痕を残そうと奮闘している。

 西武の熊代聖人2軍外野守備走塁コーチが「走攻守全てにおいてポテンシャルが高いです。バネがあって、足が速く、地肩が強い。タイプで言えば、(西武OBで元ソフトバンク監督でもある)秋山幸二さん。きっかけをつかめば、一気にすごい選手になるかもしれません」と潜在能力を称賛する逸材がいる。通算2157安打、437本塁打、本塁打王1回、打点王1回を誇り、1989年にはトリプルスリーを達成、守っても外野手としてゴールデン・グラブ賞を11回も獲得した元スーパースターの秋山氏になぞらえるのだから、ただ事ではない。

 19歳のドラフト2位ルーキー・古川雄大外野手だ。大分・佐伯鶴城高時代に通算21本塁打を放ったが、プロ入り当初は粗削りで、熊代コーチは「(外野守備は)素人かと思うくらい、打球の追い方も捕り方も下手でした」と苦笑する。今季は3軍で体づくり中心の練習に取り組み、イースタン・リーグでは1試合に出場し1得点を記録したに過ぎない。

 しかし、ルーキーイヤーの1年を無駄には過ごさなかった。186センチの長身に加え、入団当時の85キロから95キロに増量。「ご飯の量を増やしたというより、栄養士さんに相談しながら効率的に食べ物を摂り、高校時代には週1回だった筋トレを4回にして、ここまで増量しました。体重は100キロあってもいいと考えていて、前提として現在18%の体脂肪率を15%にしたいです」と明確な将来像を描いている。「増量した効果で、打撃の飛距離が伸びた実感があります」と手応えをつかんでいる。

スケールは大きく「他人に打つことのできない打球を飛ばしたい」

 一方で「胸板が厚くなり、太ももは太くなりました。鏡に自分の姿を映して、ニヤニヤしてしまうこともあります」と茶目っ気たっぷりに明かす。もちろん体が大きくなっただけではなく、熊代コーチは「技術的にもこの1年で、はっきり成長のあとがうかがえます」と評価する。3軍の練習に合流していた山川からもたびたび打撃のアドバイスを受けたそうで、古川は「今まで聞いたことがなかった打撃理論をうかがうことができました」と目を輝かせる。

 それでも、改善しなければならない点はまだまだ多い。熊代コーチは「ポテンシャルが高いだけに、打撃も、守備も、走塁もと1度に欲張りすぎて、消化不良を起こさないように。われわれコーチ陣がバランスを取って、鋳型にはめ込むことなく、焦らせずに彼の能力を引き出していきたい」と慎重にステップを踏む。「現時点では走り方ひとつを取っても癖が強い。もしかすると(1軍で本領を発揮するまでには)4~5年かかるかもしれない」と見ているが、才能の豊かさには疑う余地がない。

 その古川は10日、「フェニックス・リーグ」の四国アイランドリーグplus選抜戦(南郷スタジアム)に8番・左翼でスタメン出場し、第1打席はヘルメットの頭頂部付近をかすめる死球。第2打席と第3打席に左前打を連発したが、第4打席は空振り三振に倒れ、3打数2安打1死球。「第4打席で変化球に対応しきれなかったところが課題です」と反省が先に口をついた。

 自分の将来像は「当てにいくのではなく、しっかりスイングして、他人に打つことのできない打球を飛ばしたい」とスケールが大きい。フェニックス・リーグ期間中には「ホームランを5本打ちたい」と短期目標を掲げている。残り16試合で5本塁打となると、1軍の年間143試合に換算すれば45本ペースだが、本人は「それはヤバいですね」とあっけらかんと笑い飛ばす。1軍の大舞台で見てみたい笑顔だ。

(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)

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