左足負傷中の首位打者が見せた意地 緊迫の代打に効いた…指揮官がささやいた一言
オリックスの頓宮裕真捕手が8回に貴重な追加点となる適時二塁打
■オリックス 2ー0 ロッテ(20日・京セラドーム)
首位打者の貫禄を、一振りで見せつけた。オリックスの頓宮裕真捕手が20日、ロッテとのクライマックスシリーズ(CS)ファイナルステージ第3戦(京セラドーム)の8回2死一塁から代打で登場。1-0の展開から追加点となる適時二塁打を放ち、試合の流れを一気に引き寄せた。
「(代打は)1打席しかないので、ファーストストライクを。追い込まれる前に打てたらなと思っていました」
初球の外角低め直球を捉えると打球は左翼線にはずんだ。一塁走者の若月が「中学校の体育祭を思い出した」と言うように“激走”を見せ、本塁に生還。二塁ベース上で右拳を突き上げて喜んだ頓宮は「感謝しています」と賛辞を送った。
痛いはずの左足で懸命に踏ん張った。9月下旬に左足薬指の疲労骨折が判明し、リハビリ生活を送っていた。19日の第2戦で代打で復帰したばかり。日常生活では痛みがまだ残るが「(自分の)やれることを。朝にケアをしてやれることをやっています。試合に出たら関係ないと思うので、しっかり準備だけしています」と装着したレガースをゆっくりと外した。
「ほいさー」のおかわりでスタンド熱狂
今季は打率.307の成績を残し、自身初のタイトルとなる首位打者に輝いた。スタンドからの期待も一身に背負い「昨日(代打で)あんな(大きな)歓声は初めてだった」と声援のボリュームに驚くと「T(-岡田)さんの時、やっぱりすごい(声援がある)ので。Tさんに近づけるように結果を出していきたい」と“チームの顔”になることを強く誓った。
直前で若月が先制適時打を放っていたため、代打起用に「良い場面で、ドキドキなんですけど」と胸中を明かした。気持ちを落ち着かせてくれたのは中嶋監督の言葉で「監督から打席に行く前に『盛り上げてこい』と。そこで楽になりました。良い場面で使って下さった監督に感謝ですし、みんなの声援で本当に力をもらった」と頭を下げた。
指揮官は、リーディングヒッターの一打に「さすが……なんかな?」とジョークを炸裂させると「よく打ったなと。あの球場の盛り上がりをみたらね、燃えるでしょうし。非常に良い感じで入れたのかなと思いますね」と褒めた。
お立ち台に一緒に上がった若月からは「ベンチでうるさくて、うるさくて……本当に」と愛あるイジりを受けると「存在感があって頼もしい」と称えられた。頓宮は「ベンチにいる選手は声(を出す)しかないと思うので、盛り上がればいいなと思ってます」。ヒーローインタビューの最後には、定着しつつある「ほいさー」を“おかわり”。頓宮の躍動で、静かだった客席は、もう昔のことだ。
(真柴健 / Ken Mashiba)