大学生投手が豊作も…楽天は高校生5人の意外性 オリも独自路線、専門家が見る“未来”

楽天・今江敏晃監督【写真:矢口亨】
楽天・今江敏晃監督【写真:矢口亨】

「現有戦力にまだ3~5年レギュラーを張れる選手が多い」

 26日に行われた「2023 プロ野球ドラフト会議 supported by リポビタンD」で、パ・リーグの各球団はそれぞれチーム事情を反映した指名を行った。現役時代にロッテなどで日米通算234セーブを挙げ、現在社会人のエイジェックの投手コーチを務める小林雅英氏が分析した。

 まず目立つのは、リーグ3連覇を達成したオリックスの1位から4位までを高校生が占めたことだ(下位の5、6、7位はいずれも社会人投手)。小林氏は「独自路線ですね。現有戦力に怪我さえなければ、まだ3~5年レギュラーを張れる選手が多い。それを見越して、彼らがベテランになった時に今年獲った選手が出てこれるように、長い目で見た年齢層のつくり方をしている」と指摘し、「強いからこそできること、と言えるかもしれませんね」と印象を述べた。

 1位で指名した上田西高・横山聖哉内野手が守る遊撃には、まだ21歳の紅林弘太郎内野手がいるが、小林氏は「近い将来、どちらかが今季レギュラーを固定できなかったセカンドへ回る選択肢も出てくるのではないか」と予想。オリックスでは2020年ドラフト1位で福岡大大濠高から入団した山下舜平大投手が3年目の今季、1軍デビューを飾ると一気にシーズン9勝(3敗)、防御率1.61と活躍。2019年1位の宮城大弥投手も高卒2年目の2021年から3年連続2桁勝利をマークしており、同年2位の紅林を含めて、高校生の上位指名選手が順調に主力に育つ流れができている。

 今季5位に終わった西武は、チーム防御率はリーグ2位の2.93を誇っており、リーグワーストの435得点の打線をテコ入りするかと思いきや、支配下で7人を指名したうち6人が投手。1位では3球団競合の末、國學院大の左腕・武内夏暉投手の交渉権を獲得した。短所を補強すると言うより、長所をさらに伸ばす狙いだろうか。「来季が就任2年目となる松井稼頭央監督はもっと点を取られない、守り勝つ野球を思い描いているのかなと感じました。現有の先発投手陣もまだ若いですから、刺激し合い、さらなる成長が期待できます」と小林氏。一方、35歳の守護神・増田達至投手が今季防御率5.45と振るわなかっただけに、「指名した中から、抑えの後釜を狙える投手が出てくるといいですね」と注目する。

ロッテ1位の明大・上田は安田、山口とレギュラー争いか

 ロッテは、ENEOS・度会隆輝外野手をはじめ抽選を3度外した末、最終的に明大のスラッガー・上田希由翔内野手を1位指名。守備位置は三塁もしくは一塁の選手だ。「僕はどちらかというと、中村奨吾(内野手)と藤岡(裕大内野手)が30代に突入した二遊間を補強するのかなと予想していましたが、そこは茶谷(健太内野手)、友杉(篤輝内野手)らの成長を見込んでいるのかもしれません」と語り、「上田選手には安田(尚憲内野手)、山口(航輝外野手)らと競争しながら、お互いにレベルアップしていってほしい」と期待を寄せた。

 小久保裕紀新監督の下で4年ぶりの覇権奪回がノルマとなるソフトバンクは、外れ1位で大阪桐蔭高・前田悠伍投手を3球団競合の末に指名。2位から6位までは大学生・社会人が占めた(投手4人・野手1人)。小林氏は「(即戦力として)ある程度、来年から頑張ってくれよ、という意図を感じます」と見た。

 2年連続Bクラスで今江敏晃新監督が就任した楽天は、支配下で12球団中最多の8人を指名し、そのうち5人が高校生。「意外に高校生が多いですね。どちらかと言うと来年すぐに、というより将来性を見込んだ指名。来年に関しては、現有の若手の成長に期待しているのでしょう」。2年連続最下位の日本ハムでは、2位の上武大・進藤勇也捕手に注目。今季は伏見寅威捕手、アリエル・マルティネス捕手ら7人がスタメンマスクを分け合い流動的だっただけに、小林氏は「数年のうちに正捕手を狙える選手になってほしい、という思いを込めた指名ではないか」と受け止めた。

 各球団の方針が鮮明に見えた印象。指名された選手たちはそれぞれ数年をかけて、新しいチームをつくっていくことになる。

(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)

RECOMMEND

CATEGORY