痛恨敗戦でも即起用 OB右腕が分析…短期決戦に見たオリ指揮官の“決断力”

オリックス・田嶋大樹【写真:球団提供】
オリックス・田嶋大樹【写真:球団提供】

元オリックスの鈴木優氏が綴るCSでの戦いぶりから見る古巣の強さ

 オリックスと巨人で投手としてプレーし、2022年限りで現役を退いた鈴木優さんは現在、米国に約2年の予定で留学中だ。現地で感じた“ベースボール事情”を、不定期でレポートしてもらっているが、今回は特別編として、「パーソル クライマックスシリーズ パ」でのオリックスの戦いぶりを振り返り、28日から阪神との日本シリーズに臨む古巣の強さについて綴ってもらった。

◇◇◇◇◇◇◇

 オリックスはロッテとのCSファイナルステージを4勝1敗(アドバンテージ1勝含む)で制し、3年連続日本シリーズ進出を決めた。終わってみれば余裕のある勝ち上がり方に見えるが、観戦した人はそのようには感じないほど、見ごたえのあるシリーズだったのではないだろうか。中でもポイントとなった試合として、唯一の負け試合だった第2戦を挙げたい。

 初戦をエース・山本由伸投手で苦しみながら勝ち、19日の第2戦は田嶋大樹投手を先発マウンドに送った。序盤は苦しみながらも、力のあるストレートと流れるように落ちるスライダーを武器に、中盤から勢いに乗り、5回を終えて67球3失点。シーズン中ならば当然続投で、この日の田嶋投手も6回のマウンドに上がり、2死までは問題なく進んだが、そこからが難しかった。

 石川慎吾外野手に対してややボールが荒れた様子で四球を出し、続くグレゴリー・ポランコ外野手にはストレートの四球で一、二塁のピンチ。それでもまだ球数は87球。平井正史コーチを中心に一度はマウンドに集まるものの、ベンチは続投を決断した。ところが、続く岡大海外野手に初球ボールからの2球目、甘く入った変化球を捉えられ、3-2と1点差に迫られてしまった。

 ここで交代もあるかと思ったが、次打者が左の安田尚憲内野手ということもあってか、あとアウト1つを任せる決断。しかし、ここでも2ボールと先行し、3球目の甘く入ったカットボールを痛打され、逆転を許してしまった。安田選手が走塁でアウトになったため、ここでチェンジとなったが、結果的に継投のタイミングで失敗した形となった。

オリックス・山岡泰輔【写真:球団提供】
オリックス・山岡泰輔【写真:球団提供】

第3戦と第4戦は早めの継投で勝利をもぎ取る

 ここで思ったのは、レギュラーシーズンとは違うポストシーズンでの継投の難しさだ。田嶋投手は決して調子が悪かったわけではなく、最後の場面以外はしっかりと役割を果たすピッチングだった。シーズンでいえば、ここでの続投の決断は難しいものではなく、セオリー通りだ。

 だが、ポストシーズンを勝ち上がってきたロッテの勢いと、2死を取ってからの田嶋投手の投球内容を考慮すれば、結果論ではあるが、継投もありだった。試合後の会見でも中嶋聡監督が「自分のミス」と言ったように、すごく難しい展開だったと思う。

 そして第3戦、球団新記録となるデビューから7連勝を挙げている東晃平投手が先発マウンドに上がる。初回のピンチをしのぎ、2回には3者連続三振に仕留めるなど、さすがのピッチングを披露。5回終了時点で球数は76球。ここもシーズンなら間違いなく続投の場面だが、中嶋監督は前日を踏まえてか、6回からリリーフ陣を投入。残り4イニングをしっかり抑えて完封勝ちを収めた。

 続く第4戦も同様の展開。先発した左のエース・宮城大弥投手は、6回無失点で球数は76球。シーズン中の宮城投手であれば、もちろん続投で、完封を狙えるくらいの場面だが、ここも早めの継投に入り、7回を阿部翔太投手、8回を山崎颯一郎投手、9回を抑えの平野佳寿投手がしっかりと抑えて逃げ切った。ポストシーズンゲームでの継投は、本当に難しいということがわかったCSだった。

第2戦で失点した山岡を翌日に登板させたのもポイント

 投手起用の面で、もう1つ“さすが”と感じたポイントがあった。山岡泰輔投手の起用法である。第2戦では守護神・平野佳投手がベンチ入りしなかったこともあり、抑えとしてマウンドに上がったが、登板間隔が空いたこともあってか本来の実力が出せず、サヨナラ負けを喫してしまう。

 普通なら翌日以降はやや慎重になってもおかしくないが、中嶋監督は第3戦、0-0の7回という大事な場面に山岡投手を投入。死球で1人走者を出したものの、しっかりと抑えた。試合後、山岡投手は「早めに投げさせていただいた監督に感謝したい」とコメントしていた。

 これがオリックスの強さを象徴する場面だったと思う。選手がもし結果を出せなくても、すぐにチャンスを与える。そして選手が起用に応える。それがシーズン中から行われ、全員が勝ちパターンで投げられるリリーフ陣がそろっている。

 阪神との「関西ダービー」となった日本シリーズは、どちらも投手力が武器のチームで、1点を争う試合が多くなることが予想される。先発からリリーフへの継投のタイミング、そして救援陣の起用法。ぜひ、そんなところにも注目して見てほしい。

(「パ・リーグ インサイト」鈴木優)

(記事提供:パ・リーグ インサイト

RECOMMEND

KEYWORD

CATEGORY