入団させたから“キャンプ地変更”報道 「自分は関係ない」…一変した大人の態度
ロッテのキャンプ地が石垣島に変更…大嶺氏「自分は関係ない」
プロ野球はオフシーズンに入り、ファンにとっては来年2月の球春到来が待ち遠しい時期となった。ロッテは2008年から沖縄・石垣島で春季キャンプを行っている。キャンプ地をそれまでの鹿児島から変更したきっかけは、2006年の高校生ドラフトで1巡目指名した石垣島出身の大嶺祐太氏に入団してもらうためだったと当時言われた。だが、大嶺氏は「自分は関係ないです」と真相を語る。
大嶺氏はロッテで15年、中日で1年プレーし、2022年限りで16年間の現役生活にピリオドを打った。プロ野球人生のスタートは波乱の幕開けだった。高校生ドラフトでは、相思相愛だったソフトバンクに加え、ロッテも1位指名。くじ引きでロッテが交渉権を獲得したため、1年間の浪人を視野に入れていた。その大嶺氏を説得するため、当時ロッテの監督だったボビー・バレンタイン氏や球団関係者が石垣島を訪れた。
「自分がロッテに行くって言わないから、キャンプ地が石垣島になったってみんなに言われるんですけど、全く関係ないです。自分もプロ1年目は鹿児島のキャンプに参加しましたが、鹿児島はメイン球場とサブ球場の距離があり、車で移動していました。石垣島は、メイン球場とサブ球場が並んでいます。なので当時の社長が『こっち(石垣島)でキャンプをしても悪くないな。面白いんじゃない?』と言ったのを、メディアが『キャンプ地が石垣に』の横に小さく『なるかも』と書いて報道したんです」
その報道の後から、周りの大人たちの様子が変わったのを感じた。それまでは「(プロ入りは)どうするの? 頑張ってね」と言われることが多かったが「ロッテに行けばいいじゃん」との声が多数に。「当時の自分は、ロッテのキャンプが石垣島になると島に経済効果があるなんて知らなかった。大人が嫌いになりました」と疑心暗鬼になった。
その後、ロッテが提出した育成プランに目を通すなど、熟考の結果、入団を決断。石垣市は市営球場を大幅に改修し、屋内練習場などの周辺設備も整えてキャンプを誘致した。今でも春季キャンプのシーズンには、たくさんのロッテファンが島を訪れる。大嶺氏を擁した八重山商工高が2006年に春夏連続で甲子園出場を果たした後も、たくさんの観光客が訪れるようになった。
キャンプ誘致の経緯はどうであれ「自分をきっかけに、石垣島を知ってくれたらうれしいです。具志堅用高さん(地元出身の元WBA世界ライトフライ級王者)にはかないませんけどね」と笑顔を見せる。第2の人生は野球界を離れて飲食業に携わっているが「いつか石垣島の子どもたちに野球教室をしたいです」。生まれ育った郷土への恩返しを思い描いている。
(篠崎有理枝 / Yurie Shinozaki)