指揮官から「やってみないか?」 下手投げ“転向”の村西良太…地面スレスレから狙う浮上
アンダースロー転向のオリックス・村西良太「だいぶ良くなってきた」
転機をきっかけに浮上してみせる。オリックスの村西良太投手は、2022年の高知秋季キャンプで中嶋聡監督から「アンダースロー挑戦」を打診された。そっと指揮官から伝えられた「1回やってみないか?」の言葉がきっかけで、腕の位置を下げることを決めた。
中学1年からサイドハンドに挑戦し、自信を深めてきた。津名高、近大を経て2019年ドラフト3位でオリックスに入団。威力ある直球を武器としてきたが「サイドでは結局コントロールがまとまらなかった。あまり真っすぐで空振りが取れなかったのも(腕を下げた)きっかけの1つですね」と振り返る。
下手投げ転向1年目の2023年は1軍登板7試合にとどまったが、着実にファームで手応えを積んだ。2軍で22試合に登板して6勝5敗、防御率1.73の成績でウエスタン・リーグの最優秀防御率に輝いた。
タイトル獲得には少し照れた表情を見せ「投げていても、だいぶ良くなってきた感触があります。(リリースポイントが)地面に近づいてきたなと。カーブを投げた時、たまに地面に擦れることもありますね。基本的にはギリギリのところを通す感じです」と表情を引き締める。
勝負の1年に「前に踏み出すようになりました」
飛躍の背景には、熱心に見た動画がある。「牧田(和久)さんのYouTubeで『上から投げる意識』というものを見て、良くなったと思います」。球界でも珍しいアンダースロー投手の映像は、全員が“教材”となる。
「僕はみんな(の映像を)見てますね。鈴木健矢(日本ハム)も渡辺俊介(元ロッテ)さんも。中川颯(DeNAに移籍)にも教えてもらったりしました。最初は投げ方もわからなかったので、ボールがどこにいくかもわからない状態だった。バランスも全然で120キロぐらいしか出なかったので……。少しずつ良くなっていると思います」
変化させたのは腕の位置だけではない。重心位置を下げるため「1歩から1歩半、前に踏み出すようになりました。フォークの握りでライズ系のボールも練習しています」と工夫を重ねる。
今オフにはエースの山本由伸投手がポスティングシステムを利用してドジャースに移籍。山崎福也投手も国内FA権を行使し、日本ハムに移籍した。先発ローテーションが“実質”2席空いた状況に「狙っていきたいですね」と、虎視眈々と調整を進める。
決断を後押しした指揮官も、静かに目を光らせる。「中嶋監督に『投げる直前に力を入れると腕が走る』と言っていただいて、力を入れるポイントを変えてみました。良い感じに来ています」。勝負の1年が始まる。
○真柴健(ましば・けん)1994年8月、大阪府生まれ。京都産業大学卒業後の2017年に日刊スポーツ新聞社へ入社。3年間の阪神担当を経て、2020年からオリックス担当。オリックス勝利の瞬間に「おりほーツイート」するのが、ちまたで話題に。担当3年間で最下位、リーグ優勝、悲願の日本一を見届け、新聞記者の卒業を決意。2023年2月からFull-Count編集部へ。
(真柴健 / Ken Mashiba)