育成→年俸2000万円に昇給も…両親は「何もいらないよ」 中古車を選ぶ茶野篤政の堅実さ
茶野篤政が両親に教わった“迷信”…「嘘をついたら岩に挟まれるよ」
長年の感謝の気持ちを、形にして伝えたかった。育成契約から支配下選手まで駆け上がったオリックスの茶野篤政外野手が、新年に郷里の「勝運の神様」に感謝を込めて、木製鳥居を寄進した。滋賀県東近江市の阿賀神社。赤神山の中腹にあり、別名「太郎坊宮」として親しまれている。
「太郎坊宮」は、聖徳太子が国家安泰を祈願して建立したとされる。勝負事の神様として知られ、御守りには「勝」の1文字が記されている。スポーツ選手や実業家の参拝が多く、悪心のあるものが通ると挟まれるとされる夫婦岩などもあり、パワースポットとしても有名だ。
茶野は赤神山の麓の旧八日市市小脇町で生まれ、地元の箕作小学校、聖徳中学校に通った。町のどこからでも見える「太郎坊さん」は身近な存在で、初詣や野球の大会などの節目にお参りは欠かさなかった。茶野は高校、大学で親元を離れても「大学のリーグ戦が終わり、帰省した時には必ずお参りをしていました」と振り返る。
幼少期には夫婦岩を通る際に、両親から「嘘をついたら岩に挟まれるよ」と笑顔で指摘を受けたのも懐かしい思い出だ。現在、阿賀神社が進めているのが、木製鳥居の再興だ。麓から神社に続く参道には、かつて1000基以上の木製鳥居が設けられていたが、良質な木材の確保が難しくなったことなどから次第に減少している。
そのため2021年から寄進を呼びかけ、順次、新しい鳥居に付け替えられている。茶野は母から木製鳥居再建の話を聞き「育成から支配下になり、ケガなく活躍できたのは太郎坊さんのおかげ」と寄進することを決め、今年の初詣の際、12万円を寄進する手続きを終えた。
着実に生活を確立してきた両親を誇り「何か買ってほしいという感じじゃなかった」
今季年俸は育成選手時代の240万円から、2100万円(金額は推定)に大幅アップした。それでも、茶野は「1年(年俸)が上がっただけで、まだまだです」と浮ついた気持ちはない。京セラドーム大阪への通勤のために購入したマイカーは約200万円。中古のプリウスを選択するなど堅実な生活を送っている。
さらに、これまでの野球人生を支えてくれた両親に「好きなものを買ってあげる」と大盤振る舞いをしようとしたが、両親からは「何もいらないよ」という返事があった。「僕自身も1年、ポッと(年俸が)上がっただけなので、もうちょっと頑張って大きいものを買ってあげたいんですけど。両親も1年上がっただけで『何か買ってほしい』という感じじゃなかったです」。派手なことを嫌い、着実に生活を確立してきた両親を誇りに思っている。
寄進の理由は「大きなケガなくやれた御礼と、2024年はずっと1軍で1試合でも多く出場することをお願いしました」。故郷の「勝負の神様」に守られ、2年目のシーズンの飛躍を誓う。
〇北野正樹(きたの・まさき)大阪府生まれ。読売新聞大阪本社を経て、2020年12月からフリーランス。プロ野球・南海、阪急、巨人、阪神のほか、アマチュア野球やバレーボールなどを担当。1989年シーズンから発足したオリックスの担当記者1期生。関西運動記者クラブ会友。2023年12月からFull-Count編集部の「オリックス取材班」へ。
(北野正樹 / Masaki Kitano)