予期せぬ戦力外に「え、マジか」 自費で台湾挑戦も不合格…引退直前に“救いの手”
独立・北九州入りした行木が語る広島から受けた2度目の戦力外
「自分の中では少し余裕あったんですよね。肩も治っていたので、だから『え、マジか』って感じでした」。今季から独立・九州アジアリーグの北九州下関フェニックスでプレーする元広島・行木俊投手にとって、2度目の戦力外は想定外だった。昨年11月の合同トライアウトでもNPBから声はかからず。「野球をやめようかとも思いました」と振り返る。
寮のロビーで電話が鳴った。行木にとっては育成再契約となった1年目のオフ以来の戦力外通告。電話に出て、マツダスタジアムに来てくれと言われた瞬間に全てを察した。「マジかってなって……。どうしようって。用事があって外に出ようとしていたんですけど、行けなかったですよね」。
広島3年目の昨季は、千葉・横芝敬愛高時代から悩まされていた右肩痛も改善し、投球内容も徐々に良くなっていた。ウエスタン・リーグでは、19試合に登板。2勝1敗、防御率3.32の成績を収めていた。しかし、期限までの支配下登録は叶わず、オフに翌年の契約を結ばないことを伝えられた。
納得はしていなかった。ただ、戦力外通告を受けた場では、その理由を聞くことはできなかった。「言われるがままに、受け入れるしかなかったですね。結局は他人が評価するものなので。そこは受け入れないといけないので」と自分に言い聞かせた。
“先輩”の境遇で感じたNPB復帰の難しさ…目指す“飛びぬけた成績”
昨年11月の12球団合同トライアウト受験を即決。しかし、NPB他球団が興味を持っている選手はトライアウト前に新天地が決まっている場合が目立った。「トライアウトから(NPB他球団との契約は)難しいかなというのは思っていました」。一縷の望みに賭けたが、連絡は来なかった。
トライアウト後、複数の社会人やクラブチームから連絡を受けた。条件の良いオファーもあったが、もう一度プロの舞台を目指すならと、退路を断って台湾プロ野球(CPBL)の台鋼ホークスのトライアウトを受験した。自費で単身で台湾へ渡ったが、結果は不合格。「野球をやめようかと思いました」と振り返る。
現役引退も頭によぎっていたが、そんな中、広島時代のチームメートで福岡出身の益田武尚投手を経由して、北九州が興味を持っているという話を聞いた。引退も考えていたため、1度は保留したが、「周りから『もったいない』とも言われて。もう一回できるならと」。北九州でプレーすることを決めた。
2022年限りで広島から戦力外通告を受け、火の国サラマンダーズでプレーしている山口翔投手は2023年オフに、一緒にトライアウトを受験したが、NPB復帰は叶わなかった。「翔さんが153~154キロとか投げてて、それでもNPBに戻れないんだって」。1学年上で同じ境遇の“先輩”を見ているからこそ、NPB復帰が簡単ではないことは分かっている。
目指すは“飛びぬけた成績”を残すこと。「155キロは投げないととは思っている。そして、任されたところでベストの成績を。数字は(防御率)ゼロに近ければ近いほどいい」。まだまだ、あきらめていない。
(川村虎大 / Kodai Kawamura)